労働安全衛生法における健康診断の実施義務を解説! 決まりや罰則は?
会社は、健康診断を従業員に受けさせる義務があります。しかし、「パートやアルバイトにも健康診断を受けさせなければならないの?」「健康診断で行わなければいけない検査は何?」など、健康診断に関する疑問を持っている人もいるでしょう。
そこで今回は、労働安全衛生法に定められている、健康診断の種類や回数、健康診断を受けさせなければならない従業員の基準などを紹介します。
この記事を読めば、健康診断に関して悩むことはありません。衛生管理者を目指している人もぜひ読んでみてくださいね。
1.労働安全衛生法に定められた健康診断の決まり
はじめに、労働安全衛生法に定められた健康診断の種類や受けさせなければならない従業員などを紹介します。
1-1.労働安全衛生法第66条で義務づけられている
労働安全衛生法第66条では、「事業者は労働者に対し厚生労働省が定めるところにより、医師による健康診断をすること」と定めています。なお、費用は会社負担であり労働者に請求してはいけません。また、健康診断を受けさせないと事業者が50万円以下の罰金刑を科せられます。
1-2.健康診断を行う対象は常時雇用している労働者
健康診断の実施は、常時使用する労働者が対象です。正社員はもちろんのこと、1年間以上雇用契約を結んだ契約社員も対象になります。また、同じ業務を行っている正社員1週間の所定労働時間数の4分の3以上働いているパートやアルバイトも、健康診断を受けさせなくてはなりません。たとえば、事務職の正社員が週に40時間(1日8時間×5日)働いている場合、週30時間(1日6時間×5日)以上働いている事務職のアルバイトやパートも、健康診断が必要です。
ただし、厚生労働省は所定労働時間数の2分の1以上働いているパートやアルバイトは、健康診断を受けさせるのが望ましいとしています。例をあげると、理想は週に20時間(1日4時間×5日)以上正社員と同じ仕事をして働いているアルバイトやパートまで、健康診断を受けさせることです。
1-3.健康診断は最低年に1度行う
健康診断は雇い入れ時に行うほか、最低でも年に1度は実施しなければなりません。雇い入れ時に行ったきりで、後は実施しないというのは違法です。
2.労働安全衛生法に定められた健康診断の種類
この項では、労働安全衛生法に定められた健康診断の種類を紹介します。
2-1.雇い入れ時の健康診断
雇い入れ時の健康診断とは、文字どおり従業員を雇い入れるときに実施する健康診断です。職種による検査の違いはありません。既往歴や業務歴の調査、自覚症状や他覚症状の有無、聴力や視力・身長・体重など一般的な健康状態を調べます。このほか、血液検査・尿検査・レントゲン検査、心電図検査なども行うことで、病気があればすぐにわかることでしょう。
2-2.定期検診
定期検診は、1年に一度行う検査です。事務職など多くの職種の職場で実施されています。健康診断というと、定期検診をイメージする人も多いでしょう。
2-3.特定業務従事者の健康診断
有機溶剤・高圧室内業務・潜水業務など、労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に就いている従業員は、特定業務に就くときと、その後6か月に1度ずつ特定業務に関わる健康診断が必要です。労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務は、健康に悪影響が出る可能性が高いので、労働災害を防ぐためにも健康診断の期間が短くなっています。
2-4.海外派遣労働者の健康診断
海外に6か月以上派遣されて仕事をする労働者は、帰国時に会社負担で健康診断を受けなければ、国内業務に就くことはできません。世界中どこに派遣されても、健康診断は必要です。
3.健康診断の項目について
一般的な健康診断には以下の項目があります。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長・体重・腹囲・視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖など)
この項目は厚生労働省が定めているので、勝手に省略してはいけません。なお、有料でオプションをつけることはできます。
4.健康診断後に会社が行うこと
この項では、健康診断後に会社が行うことを解説します。
4-1.結果の管理と分析
労働災害を防ぐためにも、健康診断の結果は労働安全衛生法に定められた期間、保管しておかなければなりません。保管期間を短い順にあげると、以下のようになります。
- 一般的な健康診断:5年
- じん肺に関する検査:7年
- 放射線や特定化学物質の一部に関する検査結果:30年
- 石綿に関する検査:40年
検査結果によっては職場環境の改善が必要です。また、保管期間内に故意に検査結果を処分するなど、法律に違反した場合は0万円以下の罰金刑となります。
4-2.検査結果の告知
健康診断を行ったら、事業者は労働者に必ず結果を告知しなければなりません。また、労働者の検査結果を勝手に第三者に開示することは不可です。
4-3.医師の指導を受ける
検査結果が正常値を外れた場合、より詳しい検査をするように労働者にすすめます。また、保険医や産業医の指導が行われることもあるでしょう。また、現在の業務が健康的に続けられない場合は配置換えも必要です。
5.労働安全衛生法に基づく健康診断に関するよくある質問
この項では、労働安全衛生法に基づく健康診断に関するよくある質問を紹介します。
Q.従業員が1名でも健康診断は実施しなければダメですか?
A.はい。1名でも常時雇用している場合は実施してください。
Q.健康診断を労働者が断る権利がありますか?
A.断ってもかまいませんが、労働災害を実証しにくくなってしまう恐れがあるので、おすすめできません。
Q.健康診断は会社が定めた場所で行わなければダメですか?
A.いいえ。所定の検査を行えば労働者が自分で健康診断を受ける場所を探し、結果を会社に提出してもかまいません。
Q.ガン検診などをオプションでつけられますか?
A.はい。有料になりますがつけることはできます。
Q.健康診断の結果は会社で保管すればいいのですか?
A.常時50名以上を雇用している会社の場合、労働基準監督署に結果を報告する義務があります。
まとめ
今回は、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施義務や種類などについて解説しました。健康診断を受ければ、病気を早期発見することもでき、労働災害を未然に防ぐこともできます。また、事業者の義務ですので必ず受けさせましょう。派遣社員やアルバイトが多い職場も同様です。