運送業における衛生管理者の仕事は? 分かりやすく解説!

運送業とは、主に車を利用して人や貨物を運ぶ仕事全般を指します。日本にはさまざまな運送業者があり、毎日人や貨物が全国各地へ運ばれていくのです。運送業で使う自動車はトラックやバスなど大型のものが多いので、事故が起これば大きな被害が出るでしょう。そのため、従業員が50名以上所属している運送業者の事業所には、第一種衛生管理者の選任が義務付けられています。

そこで、今回は運送業の事業所で働く衛生管理者の仕事などをご紹介しましょう。

  1. 運送業における衛生管理者の仕事は?
  2. 運送業における労働災害とは?
  3. 第一種衛生管理者の資格を取得するには?
  4. 衛生管理者に関するよくある質問

この記事を読めば、衛生管理者の仕事内容がよく分かりますよ。衛生管理者の資格取得を目指す方も是非読んでみてくださいね。

1.運送業における衛生管理者の仕事は?

はじめに、運送業者における衛生管理者の職務についてご紹介します。どのようなことに注意して行う必要があるのでしょうか?

1-1.衛生管理者の職務は?

衛生管理者の職務は、従業員が健康で衛生的に仕事ができるように職場環境を整えることです。そのために、週に1度の職場巡視や健康診断の実施と結果の管理・会社に依頼されて従業員の相談に乗ったり診察をしたりする産業医との橋渡しが、主な職務になります。

運送業の従業員はドライバーだけではありません。宅配業者ならば荷物を仕分けしたり積みこんだりする従業員がいます。タクシー会社やバス会社ならば、ドライバーと連絡を取るための無線従事者もいるでしょう。この他、事務員もいます。ですから、衛生管理者は従業員の仕事内容を把握しておき、衛生管理や衛生教育を行う必要があるのです。

1-2.衛生管理者の選任が必要な職場は?

衛生管理者は、職種に関わらず50人以上が所属している職場で選任義務があります。この場合、正社員やパート・アルバイトの区別はありません。また、従業員が事業所に常在していなくても選任が必要です。運送業の場合は、ドライバーが事業所にいる時間は少ないことでしょう。
なお、運送業の場合は第一種衛生管理者の有資格者を選任しなければなりません。

1-3.運送業で衛生管理を行う際の特徴

運送業においては、労働災害を防止するためにドライバーの健康状態を良好に保つことが大切です。ドライバーが心臓の病気や脳出血などで運転中に意識を失えば、大事故につながりかねません。また、最近では睡眠時無呼吸症候群も事故の原因になると注目を集めています。さらに、心の病気にも気を配っておくことが大切です。うつ病などではないものの、過度のストレスやプレッシャーがかかり続けていると、心身共に影響が出て事故につながります。

超過勤務の状態もチェックが必要です。長時間勤務だけでなく仕事の量が多すぎても従業員の健康状態は悪化していきます。衛生管理者は従業員の勤務状態に改善が必要な場合は、経営者に意見をいわなくてはなりません。

1-4.衛生委員を設置する

衛生委員とは、従業員に衛生教育の大切さを理解してもらい、労働者の意見を経営者に伝えるための場です。ですから、衛生管理者と産業医・衛生管理の仕事の経験がある従業員とで構成されます。従業員が50名以上いる職場には設置が義務付けられていますので、衛生管理者の選任が必要な職場では衛生委員会の設置も必要です。安全委員がある場合は、2つを合体して安全衛生委員にしてもよいでしょう。

仕事が忙しい職場では会議を開くのも大変ですが、月に1回は会議を開かなくてはなりません。会議は勤務時間に行い、勤務外で行った場合は経営者が割増賃金を払います。

1-5.衛生教育を行う

衛生教育というと、職場の清潔度を維持する教育と思われがちですが、健康管理の大切さなども知ってもらうための教育です。例えば、このような自覚症状があったら仕事を休んで病院を受診するということや、産業医に面談を申し込むように教えることも衛生管理の一環になります。たとえ運転に関わらない方でも、仕事が忙しすぎて超過勤務が続くと健康を損ねることがありますので、従業員すべてに対して安全教育は必要です。

2.運送業における労働災害は?

運送業における労働災害といえば、真っ先に交通事故が思い浮かぶ方が多いでしょう。交通事故ももちろん労働災害の一種ですが、この他に長時間の運転が原因で起こった腰痛や不規則な勤務形態が原因の不眠、仕事のストレスが原因で発症するうつ病なども労働災害の一種です。最近はインターネット通販が増えたことで、特に貨物運送業者の仕事が増えて過重労働の原因となっています。労働災害を防ぐためには、働き方を考えることも必要です。

3.第一種衛生管理者の資格を取得するには?

この項では、運送業で衛生管理を行うことのできる第一種衛生管理者の資格を取得する方法をご紹介します。どのような取得方法があるのでしょうか?

3-1.衛生管理者を取得する方法

衛生管理者とは、前述したように従業員が健康で衛生的に仕事ができるように職場環境を整える職務を行うことのできる資格です。衛生管理者は国家資格であり、職種に関わらず50人以上の従業員が所属している職場では、選任が必要になります。

衛生管理者の資格を取得するには、理学部や工学部など指定された学部を修了し、厚生労働省が定める講習を受けて修了試験を受けるか、実務経験を積んで試験を受けて合格しなければなりません。

なお、薬剤師・医師・保健師など特定の資格を取得している方は、各都道府県の労働局に申請をすれば第一種衛生管理者の資格を取得できます。

3-2.実務経験の年数はどのくらい?

衛生管理者の受験資格を得るためには、職場で衛生管理の実務経験を積む必要があります。その期間は、大学や短大を卒業した方で1年・高校を卒業した方は3年・それ以外の方は10年間の実務経験が必要です。今は衛生管理の仕事をしていなくても、かつて実務を行っていたことを証明できれば、受験資格を得ることができます。

3-3.試験内容や申し込み方法

衛生管理者の試験は、安全衛生技術試協会が主催しています。受験科目は

  • 労働衛生
  • 関係法令
  • 労働生理

の3科目であり、第二種衛生管理者の資格を取得してる方が第一種の試験を受験する場合、労働生理が免除になるので覚えておきましょう。

衛生管理者の試験は、国家試験の中では珍しく毎月各安全技術センターで行われています。そのため、申し込みは先着順であり、定員がいっぱいになった場合は希望日に試験が受けられなくなることもありますので注意しましょう。試験の申し込みは、協会のホームページから電子申請で行えます。受験料は6,800円です。

安全技術センターは全国に7か所あり、所在地から遠い方は泊まりがけで試験にのぞむ必要があります。なお、年に1度、センターがない県でも出張試験が行われるので、そちらを利用してもよいでしょう。

3-4.試験の難易度

衛生管理者の試験は毎月行われているため、その気になれば1年のうちに何度も受験することが可能です。そのため、合格率は高く、第一種でも55%近くになっています。ただし、初めての試験で合格する方は25%程度といわれているので、決して易しい試験ではありません。しっかりと勉強をして試験にのぞまないと合格は不可能です。

3-5.勉強のコツ

衛生管理者の試験勉強は、独学か通信教材を利用する方法が一般的です。衛生管理者の試験問題は過去問と類似した問題が多く出題されるので、参考書を読むだけでなく過去問をくり返し解くことが必要になります。

4.衛生管理者に関するよくある質問

Q.衛生管理者の実務経験はアルバイトやパートでも積むことができますか?
A.会社が衛生管理の仕事を任せてくれるのならば、可能です。勤務形態は問われません。

Q.タクシー会社も運送業にはいるのでしょうか?
A 入ります。人でも荷物でも自動車を使って運ぶ職業すべてが運送業に指定されるのです。

Q.ドライバーが衛生管理者の仕事をすることは可能でしょうか?
A.資格を取得しており、衛生管理者とドライバーの仕事が両立できるのならば問題はありません。

Q.衛生管理者のアドバイスを従業員が守らない場合、罰則などはあるのでしょうか?
A.残念ながらありません。時間をかけて理解してもらうことが大切です。

Q.衛生管理者は性別に関係なく取得できますか?
A.もちろんです。年齢・性別・国籍も関係ありません。

おわりに

今回は運送業における衛生管理者の仕事を中心に、第一種衛生管理者の資格を取得する方法などをご紹介しました。衛生管理者の職務は地味ですが、労働災害を防止するためには大切なものばかりです。運送業は他の方の荷物や命を預かる大切な仕事なので、衛生管理や衛生教育をしっかりと行っていきましょう。