振動障害の予防対策とは?発症する原因とともにご紹介します。

振動障害とは、振動する電気工具などを使い続けてきた人に現れやすい障害です。
日本では、昔からチェーンソーを長時間使う林業にたずさわる方が、発症しやすい障害として有名でした。
今回は、振動障害を予防する方法や発症してしまった人がいる場合の対策をご紹介します。
振動障害は、労災です。
しかし、症状が出るまでに時間がかかるので、退職後に症状が出る人も少なくありません。
衛生管理者の方はぜひこの記事を参考に、予防と対策をしてみてください。

  1. 振動障害とは?
  2. 振動障害の症状の現れ方とは?
  3. 振動障害の予防対策とは?
  4. 振動障害が発症してしまったら?
  5. おわりに

1.振動障害とは?

振動障害とは、チェーンソーに代表される振動する電動工具を使用することによって起こる振動障害です。
電動工具を使ったことがある方ならお分かりだと思いますが、電動工具の振動は手や腕にまで伝わります。
使った後で、しばらく手がしびれたり震えが残ったりする方もいるでしょう。
振動障害とは、手から発生して腕全体に起こる振動障害を指します。
全身振動が起こると、また別の障害になりますので、混同しないようにしてください。
症状としては、寒いときに発作的に現れる手や指の白色化現象(レチーノ現象)が代表的です。
ただ白くなるだけでなく、末しょう循環障害、手のしびれ、感覚が鈍くなるなどの末しょう神経障害が起こります。
また、ひじ関節より先の関節が痛んだり動きが制限されたりすることもあるでしょう。
さらに、握力の低下など運動障害が起こることもあります。
手や指が白くなることから、かつては「白蝋(はくろう)病」とも呼ばれていました。
日本では、チェーンソーを多用する林業に従事する方の職業病として、昔から問題視されてきたのです。
現在では、振動工具も増えて建築業者でも振動をともなう道具を使うことが多くなっています。
ですから、振動障害が起きる可能性のある職場も、増えてきているのです。

2.振動障害の症状の現れ方とは?

振動障害の発症は、個人差があります。
同じ時間同じ電動工具を利用していても、症状が出る人と出ない人がいるでしょう。
振動障害の初期症状は、手のしびれを訴える方が多いです。
また、腕のだるさや脱力感、さらに、振動する工具を使っている最中や睡眠中に強い腕のしびれを訴えてくる人もいるでしょう。
一般的に、寒い地域で振動する工具を使い続けると振動障害が発症しやすいといわれています。
また、若い人よりも中年以降の人や、喫煙の習慣がある人は、振動障害が発症しやすいでしょう。
さらに、仕事を退職した後に振動障害が発症することもあります。
振動障害は、労災です。
ですから、たとえ退職した後でも発症が確認されれば、元職場は対処しなくてはなりません。

3.振動障害の予防対策とは?

では、振動障害の発症をできるだけ抑えるにはどうしたらよいのでしょうか?
この項では、予防対策の一例をご紹介します。
衛生管理者の方は、ぜひ参考にしてください。
振動障害は根本的な治療法がありません。
ですから、予防対策が重要なのです

3-1.振動が出る工具の使用時間を短くする

振動が出る工具を使用する時間が長いほど、振動障害が発生するリスクが高まります。
ですから、使用時間を決めてください。
また、どうしても長時間使用しなければならない場合は、ひとり月に何回までと制限を設け、同じ人が長時間工具を使用しないようにしましょう。さらに、古い工具ほど重くて振動も激しい傾向にあります。
ですから、定期的に新しい工具に買い替えましょう。
それだけでも、振動障害の発症リスクを減らせます。

3-2.工具の保守、点検をきちんとする

工具の保守や点検に不備があると、振動が大きくなります。
特に、モーター部分や歯車、ベルトの部分が劣化してくると振動が大きくなるでしょう。
毎日使っているものですと、劣化に気付きにくいこともあります。
ですから、チェック項目を設けて入念に点検してください。
保守、点検がしっかりしていると工具による事故も防げます。

3-3.工具を使用する従業員にローテーションを組む

工具を使用する時間が短くても、同じ人が長期間工具を使用し続ければ振動障害が発生しやすくなります。
ですから、振動する工具を使う従業員のローテーションを組み、全く工具を使用しない日を作るようにしましょう。
これを実行するためには、振動工具を使える従業員が複数必要です。
ですから、衛生管理者や安全管理者だけでなく、会社の人事部との協力が必要になってくるでしょう。

3-4.健康診断を行う

従業員のいる会社は、最低でも年1回健康診断を行うことが義務づけられています。
しかし、健康診断は主に内臓や皮膚の疾患を見つけるためのもので、振動障害は本人が申告しなければ、なかなか発見できません。
また、内科の医師は振動障害のような神経の障害は見つけにくいことも多いです。
ですから、健康診断には神経内科の医師に依頼して、振動障害のチェックを行ってもらうのもよいでしょう。
また、年1回で不十分だと思ったら、会社の経営者に依頼して、回数を増やしてもらってください。

4.振動障害が発症してしまったら?

どれほど予防対策を採っていても、振動障害の発症を完璧になくすことはできません。
振動障害の代表的な症状は手のしびれや握力の低下、皮膚の白色化ですが、これはほかの病気の症状としても現れます。
ですから、従業員に振動障害のことをしっかりと教育しておくことが大切です。
また、振動障害が発症したら薬物療法や温熱療法、運動療法を組み合わせた治療を行います。
ただし、振動障害は症状が進むほど完治しにくくなる病気です。
また、治療には一定の時間がかかります。
薬を飲んだらすぐに治る、というものではありません。
ですから、就業中に振動障害が発症した場合はすぐに配置換えを行い、振動の出る工具を使わないようにすることが大切です。
薬を使えば一時的に症状は軽くなりますが、だからといって、工具を使い続けては症状が進んでいきます。
また、喫煙の習慣がある方は治りが遅いので、可能ならば禁煙してください。
職場は振動障害を発症した従業員に労災の認定をしましょう。
振動障害は生活習慣で発症することはまずありません。
ですから、労災の中では比較的認定されやすいでしょう。
衛生管理者は、従業員と会社の間に立って手続きのアドバイスなどを行ってください。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は、振動障害の予防や対策をご紹介しました。
振動工具は一部の職場ではどうしても必要なものです。
ですから、従業員への安全教育や取り扱いの方法を徹底しましょう。
安全教育が行き届いていれば、しびれが発生した場合はすぐに「振動障害かも」と気付きます。
そうすれば、治療もすぐに受けられるでしょう。
また、治療は時間がかかることが多いので、複数の従業員に振動障害は発症すれば会社の業務にも支障が出ます。
ですから、振動障害は予防が大切なのですね。
年配の人ほど振動障害はチェーンソーが原因、というイメージがあります。
しかし、現在の振動工具はチェーンソーだけではありません。
削岩機(さくがんき)や電動杭打機(でんどうくいうちき)なども、振動工具に入ります。
ですから、工事現場や建築現場で働く人の多くに振動障害が発生するリスクがある、と考えてください。