過重労働が原因の健康障害を防止する方法とは?
日本は世界的に見ても、労働時間が長い国です。
「企業戦士」「エコノミックアニマル」など、会社人間を指す造語もいろいろ生まれました。
しかし、過重労働は決してほめられるものではありません。
長年過重労働を続けると、健康障害が発生する可能性も高いです。
そこで、今回は過重労働が原因で起こる健康障害を防止する方法についてご説明します。
いったいどのくらい働けば過重労働とみなされるのでしょうか?
また、過重労働が原因で起こる健康障害以外の問題点もご紹介します。
興味がある方や職場の衛生管理を任されている方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
目次
1.過重労働とは?
過重労働とは、わかりやすい言葉でいうと「働きすぎ」ということです。
会社に雇用されている従業員は、労働基準法により1日の労働時間が決められています。
9時間を超えて働く場合、企業は残業代を支払わなければなりません。
9時から就業した場合、18時を超えて働いたら残業代が発生します。
この残業代が発生する時間が、過重労働の目安になるのです。
労働基準法では残業時間を1か月45時間以下と定めています。
しかし、職種によっては期間限定で猛烈(もうれつ)に忙しくなることもあるでしょう。
ですから、労働基準法では「特別条件付き」として、残業時間をある程度オーバーすることを認めています。
しかし、毎月のように残業時間が45時間を超える場合は過重労働の疑いがあるのです。
特に3か月以上残業時間が80時間を超えたり、1か月の残業時間が100時間を超えたりした場合はそれだけで「過重労働」とみなされます。
ちなみに1か月80時間の残業とは、毎日4時間の残業をしたことになるのです。
つまり、1日の労働時間は12時間。半日働きっぱなしということになります。
2.過重労働が原因で起こる健康障害とは?
日本では、かつて過重労働が美徳のように思われていた時代がありました。
しかし、人は機械ではありません。毎日長時間働けば、それだけ健康に悪影響が出てきます。
そこで、この項では過重労働が原因で起こる健康障害についてご説明しましょう。
中には、時間がたってから出てくるものもあるのです。
2-1.腰痛や肩こり、睡眠不足
腰痛や肩こり、睡眠不足というのは疲労がたまっているときの代表的な症状です。
病気ではありませんが、つらく感じる方は多いでしょう。
また、この3つの症状は集中力も低下されます。
ですから、仕事のミスも増えていく可能性が高いのです。
さらに、肩こりや寝不足を深刻に受け止める方は少ないでしょう。
「たかが肩こりくらい」とつい無理をする方は多いと思います。
しかし、肩こりや腰痛、さらに睡眠不足を放置しておくとより深刻な病気を発症することもあるのです。
2-2.心臓疾患や脳疾患の発症
過重労働が続くと、脳梗塞や脳出血、さらに心筋梗塞などの発症リスクが高まります。
これらの病気の特徴は、前兆が無くある日突然発症するケースが多いこと。
さらに、発症したら最悪の結果になってしまうか、後遺症が現れる可能性が高いことです。
また、仕事がようやく一段落して休みをもらったとたん発症するというケースも少なくありません。
2-3.うつ
疲労がたまりすぎると、精神にも影響が出ます。
気力がわかなくなり、何を食べてもおいしく感じない場合もあるでしょう。
さらに、疲れているのに眠れなくなったり何もしていないのに気分が落ちこんだりします。
この状態が長く続くと、自分で最悪な結果を選ぶ可能性もあるのです。
何も前兆が無かったのにいきなり最悪の結果を選んでしまったという方は、過重労働が原因のうつ状態だったということも少なくありません。
また、このような場合は労災として認められることもあります。
3.過重労働を防止するにはどうしたらよいのか?
では、過重労働を防止するにはどうしたらよいのでしょうか?
この項では、過重労働を防止するためにできることの一例をご紹介します。
3-1.職場全体で取り組むことが大切
過重労働は、個人の努力だけでは改善できません。
必ず職場全体で改善に取り組むことが大切です。
労働環境を見直すことも必要ですが、個人の意識改革も重要になります。
たとば、上司が長時間労働するほどよい従業員と思っていると、定時に仕事が終わっても帰りにくいでしょう。
また、今日やらなくてもよい仕事を無理やり押し付けられる可能性もあります。
ですから、職場全体で過重労働が健康に与える悪影響などを知る必要もあるのです。
3-2.仕事のやり方も見直してみる
今はパソコンの普及により、特に事務仕事は以前よりもずっと効率的に進められるようになりました。
しかし、「習慣だから」という理由で、効率の悪い仕事をしている職場は多いです。
ですから、仕事のやり方を職場全体で見直し、効率化できるところはどんどん効率化していきましょう。
また、ノー残業デイを設けるのも有効です。
といっても、単に「今日はノー残業デイだから、早く帰るように」と呼びかけるだけでは効果がありません。
定時になったら空調や電灯のスイッチを切るくらいに、徹底しましょう。
そうすれば残業の習慣も少しずつ減っていく可能性があります。
3-3.従業員を増やしたりサービス残業をなくしたりすることも大切
不況になってから、多くの企業がリストラに力を入れてきました。
ですから、少ない人数で大量の仕事を片付けるのが当たり前になっている職場もあります。
しかし、5人が80時間残業して片付く仕事は、10人ならば残業なしで片付けられるはずです。
ですから、アルバイトやパートタイマーでもよいので従業員を増やすことが、過重労働の防止になる場合もあります。
さらに、サービス残業が暗黙の了解になっている職場は、ぜひ正規の残業代を従業員に払いましょう。
上層部が動かなければ、労働基準監督署に通報するという方法もあります。
きちんと残業代を払えば、過重労働が会社の経営を圧迫することが経営者にも理解できるでしょう。
3-4.衛生管理者ができることとは?
現在、職場で過重労働を行っている人が居る場合は、衛生管理者が産業医との面談を設定しましょう。
厚生労働省も月100時間以上残業をした場合は、医師の診察を受けることを推奨(すいしょう)しています。
たとえ専門外の医師であっても紹介状を書くことはできるでしょう。
疲労がたまりすぎていると本人は正常な判断ができなくなっていることもあるのです。
さらに、医師の診察結果をもとに労働時間を短縮させたり部署を異動するように上司とかけあったりすることもできます。
4.おわりに
いかがでしたか?
今回は、過重労働が原因の健康障害を防止する方法をご紹介しました。
まとめると
- 過重労働とは月の残業時間が45時間を超える状況のことを指す。
- 月80時間以上残業をすると、健康への悪影響が出る可能性が高まる。
- 過重労働が原因の健康障害は、時間がたってから現れることもある。
- 職場全体で過重労働をなくそうと取り組むことが大切。
ということです。
過重労働が原因で労災に認定される人も年々増えています。
また、社員が過重労働で病気を発症し労災に認定されると、企業の社会的な評判が落ちるかもしれません。
ブラック企業というレッテルを張られてしまうと、求人にも影響があります。
ですから、過重労働を推奨(すいしょう)してよいことはひとつもありません。