職業病にはどんな種類があるの? 症状が出た場合はどうしたらいいの?

職業によっては、働いているうちに特定の病気にかかりやすくなるものもあります。
このような病気の総称を「職業病」というのです。
その職業に就かなければ発症しない病気もあれば、その職業に就いた場合は発症率が上がる病気もあります。
そこで、今回は職業病の種類や症状、さらに対策の立て方などをご紹介しましょう。
現在は、対策しだいで職業病の発症や重症化を防ぐことも可能です。
また、衛生管理者の役割についてもご説明しますので、資格取得を目指している方はぜひ読んでみてくださいね。

目次

  1. 職業病の種類とは?
  2. 職業病の問題点とは?
  3. 職業病と労災認定について
  4. 職業病を防止するために、衛生管理者ができることとは?
  5. おわりに

1.職業病の種類とは?

まず始めに、職業病の種類についてご紹介しましょう。
一口に「職業病」といってもさまざまなものがあるのです。

1-1.特定の職業に就いていると発症する職業病

  • チェーンソーなど常に震動している工具を長期間使うことによって発症する振動障害(白蝋病(はくろうびょう))。
  • 粉じんが大量にまう職場で働いていると発症しやすいじん肺病。

これらの病気は、特定の職業に就いていると発症する職業病です。
このほかにも、金属を熱して加工する工場などでは、気化した有害物質を吸いこんで病気になることもあるでしょう。
さらに、溶接や紫外線を使う職場などは目に障害がでて視力が落ちるケースもあります。
これらの病気は、特定の職業に就かなければほぼ発症しない病気で、職業との因果関係がはっきりしているのが特徴です。

1-2.特定の職業に就いていると、発症しやすい職業病

たとえば、やけどはどんな職業の人でも負う可能性があるけがです。
しかし、調理師は直接火を使うことが多い分、ほかの職業に就いている人よりやけどを負いやすいでしょう。
このように、特定の職業に就いていると発症しやすい病気も職業病に分類されます。
一例をあげると、体重を増やさなければならない力士は糖尿病の発症率が高いです。
また、作家や漫画家など手を酷使する職業の方は、腱鞘炎(けんしょうえん)になりやすいでしょう。
さらに、残業時間が長い職場では「過労」も職業病の一種といえます。
そのほかには、重い荷物を持ち運ぶことが多い職場では、腰痛やひざの痛みも起こりやすいでしょう。

2.職業病の問題点とは?

振動障害は、指先が蝋(ろう)のように白くなって力が入らなくなる病気です。
また、じん肺病は進行すれば肺の組織が石のように固くなり、呼吸困難になります。
つまり、職業病にかかると日常生活に支障が出たり、最悪の場合は命を失ってしまったりするのです。
さらに、過労になるとうつ状態になり自分で命を絶つケースもあります。
労働は国民の義務ですが、「安全」「健康に支障が出ないように衛生的」な環境で仕事をしなければなりません。
つまり、職業病が発症する職場は労働環境がよいとはいえないでしょう。
また、職業病を放置していると長く働いている経験豊富な従業員から、働けなくなっていきます。
生産量や生産する製品の質が落ちる可能性もあるのです。
さらに、「この職業に就けば、体を壊す」と分かれば、従業員も集まりません。
そうなれば、その職種すべてが衰退していってしまうのです。

3.職業病と労災認定について

振動障害やじん肺病など職業と病気の因果関係がはっきりしている場合は、職業病を発症すると労災と認められます。
病気で働けなくなった場合は補償金が出たり、通院費に補助が出たりするケースもあるでしょう。
ただし、職業病になったからといってすぐに労災と認められるわけではありません。
特に、「腰痛や肩こり」「過労が原因の脳・心疾患(いわゆる過労死)」の場合は、仕事と病気の因果関係が立証できないという理由で泣き寝入りをしている方も多いのです。
しかし、現在は「労災職業病センター」や、「労災職業病ホットライン」などの相談窓口も増えています。
ですから、「仕事をしていて病気になったが、会社はそれを認めてくれない」という場合は、相談してみましょう。
同じような悩みを抱えている人がたくさんいる場合は、集団訴訟を起こすこともできます。
また、弁護士や医師などが相談に乗ってくれる場合もあるでしょう。
さらに、仕事をしていたら病気になってしまったという場合はがまんせずに医療機関を受診し、診断書を作成してもらってください。
これがあれば、労災申請をするときに役に立つはずです。

4.職業病を防止するために、衛生管理者ができることとは?

では、最後に職業病を予防したり悪化させたりしないために、衛生管理者ができることをご紹介します。
職場巡視や健康診断など、衛生管理者の業務が職業病の予防に役立つのです。

4-1.職場の環境を整える

一部の職業病は、職場の環境を整えれば予防できます。
特に、人体に有害な物質を扱っている職場やトンネル・鉱山などの粉じんが飛びやすい職場は、定期的に作業環境鑑定士に職場環境を測定してもらいましょう。
改善の必要がある場合はすぐに改善しなくてはなりません。
また、マスクやゴーグルなど職業病を予防するための器具を、正しく装備するように講習を行うのも効果があります。

4-2.健康診断の結果を確認する

健康診断は、従業員の健康状態を一斉に確認できる大切なものです。
健康診断の結果、複数の従業員に同じ疾患が確認された場合は、職業病の可能性が高いでしょう。
すぐに職場環境を改善し、従業員には治療を受けさせなければなりません。
職業病はある日突然発症し、あっという間に重症化することはほとんどないでしょう。
職業病の多くが、長い時間をかけて少しずつ悪化していくのです。
ですから、まだ症状が軽いうちに発見できれば重症化を防ぐこともできるでしょう。
場合によっては従業員と面談し、職場を移るように説得することも必要になります。
さらに、経営者に職業病の予防と職場環境の改善をするように意見することも大切です。

4-3.職場巡視で従業員の様子を確認する

最近は過労による脳・心疾患、さらに、パワハラやセクハラによる精神的苦痛で心の病になる人も増えています。
このような職業病は、発生するまで兆候が分かりにくいのが特徴です。
過労は、「仕事が忙しいから」とがんばってしまうまじめな人が発症しやすいといわれています。
また、パワハラやセクハラはやっている本人に自覚がない場合もあるのです。
ですから、衛生管理者の業務である職場巡視の際に従業員の様子に気を配りましょう。
相談を受けたり、何か困った様子だったりした場合は産業医との面談をセッティングしてください。
その際、ほかの従業員に知られないように気を配ることも大切です。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は、職業病の種類や対策についてご紹介しました。
まとめると

  • 職業病は、特定の職業に就くと発症するものと、発症しやすくなるものがある。
  • 職業病を放置しておくと、職場環境が悪化したり従業員の離職につながったりする。
  • 職業病は労災に認定される場合もある。
  • 衛生管理者は、職業病の発症を予防し重症化しないように職場の環境を整えよう。

ということです。
かつて、職業病は発症しても救済策はほとんどありませんでした。
また、離職してから発生する職業病も多く、因果関係を立証するのが困難なものもあったのです。
現在は、職場の環境も改善され肉体的に症状が出る職業病は減少傾向にあります。
しかし、過労による脳や心疾患、精神的な病の発症例は増えているのです。
現在は、こうした新しい職業病を予防する取り組みも重要でしょう。