労働基準法ではどうなってるの? 労働時間や残業に関する4項目
事業主や衛生管理者は、労働基準法でどのように定められているのか、きちんと知っておく必要があるでしょう。
特に労働時間に関しては、長時間労働による過労死やうつ病の発生を予防するために、上限が定められています。
労働基準法では労働時間についてどう定められているのか、主な制度にはどのようなものがあるのか、休憩時間についての法規制はどうなっているのか、まとめてご紹介しましょう。
そんな事業主や衛生管理者の方々は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
- 労働基準法の労働時間について
- 主な制度について
- 休憩時間についての法規則
- 労働基準法違反となるのはどのようなケースか
- まとめ
1.労働基準法の労働時間について
労働基準法で定められている労働時間は「1日8時間、週40時間を超えてはならない」というものです。
一部、週の労働時間が44時間まで緩和されている企業もありますが、一般的には40時間が上限となっています。
例えば1日の労働時間を7時間や7.5時間というように基準より短く定めることは可能で「1日8時間、週40時間の労働時間」を超えなければ問題はないでしょう。
しかし実際には1日8時間の労働時間では仕事が終わらず、残業している従業員はたくさんいます。
本来、会社は従業員に残業をさせてはいけないものなのですが「時間外労働・休日労働に関する協定」を労働基準監督署に提出することで、残業させることが可能です。
残業時間には割増賃金を支払う必要があり、現在の割増率は1.25、休日出勤の場合は1.35となっています。
近年は残業や休日出勤といった時間外労働が長時間化してきていることで、割増率を上げることが検討されているようです。
2.主な制度について
労働基準法で「1日8時間、週40時間」という労働時間の上限が定められているものの、これを守っていては効率的な労働が促進できない場合もあります。
そこで、不要な残業を減らすためにも、労働を効率化する意味でさまざまな労働時間制度が定められているのです。
2-1.変形労働時間制
一定期間、週40時間を超えない範囲で特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させられるのが「変形労働時間制」です。
大きく分けると以下4つの制度があります。
・1ヶ月単位の変形労働時間制
変形の期間を1ヶ月とし、各勤務日ごとの始業、終業時刻を明確に特定することで認められます。
・1年単位の変形労働時間制
変形の期間を1年とし、1日の労働時間には上限10時間が定められます。
連続した労働日数を6日とし、1週1日の休日を確保するなど、条件がいくつかあるのでチェックしておきましょう。
・フレックスタイム制
出勤および退勤の時刻を労働者自身が決める制度で、労働時間を画一的に定めない方が業務効率の上がる職種に採用されることが多いようです。
「必ず勤務すべき時間帯」と「その時間帯の中であればいつ出勤、退勤してもよい時間帯」とに分かれています。
・1週間単位の非定型的変形労働時間制
忙しい日には比較的長く働き、それほど忙しくない日は休日とするか労働時間を短くする制度です。
ただし、この制度を採用できるのは常時使用する労働者数が30名未満の「小売業」「旅館」「料理店」「飲食店」に限られています。
2-2.みなし労働時間制
労働時間を把握しづらい一部の職種には「みなし労働時間制」が適用されます。
例えば営業マンや新聞記者などは社外で仕事をする時間が多いため、実際に何時間労働しているのか把握するのが難しいでしょう。
その際、実際の労働時間にかかわらず、決めた時間を労働時間としてみなすことを認めたのがこの制度です。
3.休憩時間についての法規制
次に、休憩時間についての法規制はどうなっているかご紹介します。
普段あまり意識されていない事業主の方も多いようですが、労働基準法ではいくつかの規制がありますので、把握しておきましょう。
3-1.8時間労働で1時間以上の休憩
労働基準法では、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが義務づけられています。
労働時間が6時間以下の場合は休憩を与える義務はありませんが、ここで定められているのはあくまでも「最低基準」です。
労働時間が6時間以下であっても休憩を与えることに問題はなく、むしろ望ましいと言えるでしょう。
ただし休憩時間は労働の途中に与えるものであり、その前後に労働時間があること。
これが前提となります。
残業をして労働時間が8時間を超える場合は、追加で15分の休憩を与えないと労働基準法違反になってしまうので注意が必要です。
3-2.休憩時間かどうか判断が難しい場合
会社側としては休憩時間を与えていたつもりでも、状況によって「賃金の支払い義務がある労働時間」になる場合もあります。
例えば実際に作業はしていないけれど、指示があればすぐ作業に取りかからなければならない状態であったり、休憩時間に電話や来客の応対をさせている場合、それは「休憩時間」とはみなされないのです。
なぜなら休憩時間とは「仕事から完全に開放されて自由に利用することが認められている時間」であるため。
ただし、会社側が電話や来客応対の指示をしておらず、社員が自分の意思で応対した場合は、労働時間として該当しません。
もちろん休憩時間中の社員が電話を取らなくても注意はできませんので、よく覚えておきましょう。
3-3.休憩時間をどう利用するかの制限
休憩時間は社員が自由に利用できる時間ではありますが、一定の制限が決められています。
休憩時間後も勤務はありますので、飲酒したり職場秩序を乱すような行為は禁止することが可能です。
4.労働基準法違反となるのはどのようなケースか
最後に、労働基準法違反となるケースにはどのようなものがあるかご紹介します。
実際に労働基準法違反で事業主が書類送検された事例の多くが「賃金不払い」と「長時間労働」に関するものです。
具体的な事例は以下の通り。
- 賃金不払いを繰り返した
- 最低賃金法違反
- 割増賃金の不払い
- 違法な時間外労働や休日出勤
- 労働基準監督官への虚偽陳述
特に労働時間については、使用者と労働者の代表が「法的時間を超えて残業可能」という協定を結び労働基準監督署に届け出をすることで、法定外残業が可能になります。
これが「サブロク協定」と呼ばれるものですが、届け出をしたからといって何時間でも残業させられるというわけではないのです。
原則として上限があり、それを超えると罰則の対象になるということを覚えておきましょう。
5.まとめ
労働基準法で定められている労働時間に関する情報をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
- 労働基準法の労働時間について
- 主な制度について
- 休憩時間についての法規則
- 労働基準法違反となるのはどのようなケースか
「労働基準法で労働時間についてどのように定められているのか知りたい」という事業主や衛生管理者の方に参考にしていただきたいと思います。