労働災害とはいったい何? どうしたら防ぐことができるの?

労働災害労働災害という言葉をテレビのニュースや新聞などで効いたことがある人は多いでしょう。
しかし、その定義を知っている方は少ないとおもいます。
そこで今回は労働災害についてご説明しましょう。労働災害とはどういうものかということや労働災害事例などをご紹介しながら、多くの職場で取り組まれている防止の取り組みなどもご説明していきます。
また労働災害を防止するのために職場の衛生管理者ができることなどもご紹介していきますので、衛生管理者の方や衛生管理者の資格取得を目指している方の参考にもなるでしょう。

目次

  1. 労働災害とは?
  2. 労働災害の変化とは?
  3. 労働災害を防ぐために出来ることとは?
  4. おわりに

1.労働災害とは?

この項では、労働災害の定義や事例をご紹介します。
労働災害とは一言で言えば労働中に起こった事故なのですが、適用されるケースと適用されないケースがあるのです。

1-1.労働災害とはどんなもの?

労働災害とは、

  • 労働中に起こった事故
  • 通勤途中の事故
  • 仕事が原因で発症した病気
  • 過労死や過労による自殺

などです。労働災害は近代工業の幕開けである明治時代にはすでに発生していましたが、補償の対象になったのは戦後のことです。
それまでは多くの労働者が事故で命を失ったり働けなくなったりしても何の補償もなく切り捨てられてきました。
現在では、アスベストが原因で発症する中皮腫のように、仕事を退職してから発覚して認められるものもあります。
労働災害は私たちが思っているよりもずっと幅広い範囲で適用されるのですね。

1-2.労働災害と認められるとどうなるの?

就業中や通勤中の事故や退職してから発症した病気などが労働災害と認められると、労災保険の支払い対象になります。
労災保険は日本の会社すべてが加入している保険であり、たとえ会社が倒産しても支払われるのです。
死亡や怪我、事故がもとで障害を負った場合などでそれぞれ支払われる金額はことなりますが、働けなくなった労働者が安心して治療に専念できる程度の額は保証されることが多いでしょう。
しかし近年は、労働災害の解釈が拡大されたり、精神的な疾患などが労災と認められるかどうかで裁判になるケースも増えています。

1-3.労働災害とはどんな事例があるの?

労働災害は大きく分けて

  • 就業中の事故・通勤中の事故
  • 仕事が原因で発症した病気
  • 仕事が原因で起きた自殺

などがあります。
より具体的な例をあげてみましょう。

  • 仕事をしていたら機械に挟まれてケガをした(就業中の事故)
  • 会社に行く途中電車に乗っていたら脱線事故にあった(通勤中の事故)
  • 仕事が忙しすぎてうつ病になった(仕事が原因で発症した病気)
  • 仕事に起因する過労やうつによる自殺(仕事が原因でおこった自殺)

いかがでしょうか。こうやってあげてみると労働災害は消して珍しいことではないことがおわかりいただけたと思います。
誰もが明日労働災害に巻き込まれるかもしれません。

1-4.労働災害に認められない案件とは?

しかし、何事にも例外はあります。労働災害のことをより理解していただくためにも、通勤中や就業中であっても労働災害と認められないケースの一例をご紹介します。

  1. 会社の昼休み中に同僚とサッカーをしていて足を骨折した
  2. 終業後居酒屋に寄り、飲酒して他の客とケンカになってケガをした

この2つのケースの場合は就業中や通勤中ではありますが、明らかに仕事とは関係のないことをしてケガをしています。
この場合は本人の不注意になり、労働災害は適応されません。

2.労働災害の変化とは?

労働災害というと、就業中の事故というイメージがあります。
実際に昭和50年代までは労働災害として認められた案件のほとんどが、就業中や通勤中の事故でした。
しかし昭和の終わりごろから「過労死」が社会問題になり、平成10年以降は仕事が原因でうつ病など精神疾患を患うケースが増えてきたのです。
つまり、労働災害の内容も変化しているのでしょう。
また労働災害の中には「第三者行為災害」というものがあります。
これは「コンビニで働いていたらいきなり客の車が突っ込んできた」というケースなど、仕事とは関係ない全くの第三者が原因で起こる労働災害のことです。
現在は仕事とは直接関係なくても多くの人々と接する仕事も増えてきています。
ですから、これから労働災害の種類はますます増えていく可能性もあるでしょう。

3.労働災害を防ぐために出来ることとは?

労働災害には、防げるものと防げないものがあります。
特に危険なものを扱っていたり、大型機械を使う職場はどれほど気を付けていても労働災害を完全に防ぐことはできません。
しかしその一方で従業員の教育さえしっかりとしていれば防げる労働災害もあります。
この項では、労働災害を防ぐためにできることや実際の取り組みの事例をご紹介しましょう。

3-1.従業員の安全教育を徹底する

労働災害を防ぐためには安全教育は欠かせません。
特に扱い方を間違えれば大事故につながる薬品などを扱っていたり、大型機械を操作する必要がある職場は入念に行うべきでしょう。
衛生管理者が定期的に安全教育を行っている職場も多いです。

道具の整理整頓を欠かさない

ものが散乱している職場は事故が起こりやすいです。特に工具や調理器具などを使う職場は、整理整頓が労働災害を防ぐ有効な手段になるでしょう。
しかし、仕事が忙しければつい整理整頓はおざなりになってしまいます。
そこで衛生管理者が定期的に職場巡視をすることで、整理整頓をするように指導している職場もあるのです。

3-2.職場環境を整える

一時期は職場環境を重要視する企業が多かったのですが、不景気が長引くにつれて利益第一で職場環境が悪化しても放置している企業も増えてきました。
しかし、職場環境が悪化すれば労働災害の危険性も高まります。
たとえば、騒音を防ぐ装置が故障したままならば、そこで働いている従業員は難聴になる可能性があるのです。
ですから、衛生管理者が従業員代表として経営者側に申し入れることにより、職場環境を改善すれば労働災害の危険性も減らすことができるでしょう。

3-3.衛生管理者が医師との橋渡し役を務める

全体的に数が減っている労働災害の中で唯一発生が増えている労働災害が、精神疾患です。
代表的なものは、仕事が原因となって発症するうつ病でしょう。悪化すると最悪な結果で終わることもあります。
某大手居酒屋チェーンの従業員が激務によって精神を病み自殺してしまったニュースを覚えている方も多いと思います。
精神疾患はなかなか気づかれにくい労働災害です。
最悪のことが起こって初めて自体が明るみになるケースも少なくありません。
そこで産業医を置く企業も増えています。
しかし、産業医がいるからといって気軽に相談できる人ばかりではありません。
そこで、職場巡回の際に衛生管理者が気になる社員と産業医の橋渡し役を務めると適切な治療が早く受けやすくなります。うつ病などの精神疾患は早期治療が大切。職場巡回の際には社員の様子にも気を配ってあげましょう。

4.おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は労働災害についてご説明させていただきました。
まとめると

  • 労働災害とは仕事が原因で発生した事故や病気のことである
  • かつては就業中や通勤中の事故が多かったが、最近は精神疾患で労働災害と認められるケースも多い
  • 労働災害は教育や衛生管理者の職場巡視などで防げるものもある

ということです。労働災害は、ゼロに近づけるに越したことはありません。
また、気のゆるみが労働災害を招くケースも多いでしょう。
さらに「自分ががんばらないと」と無理をした結果労働災害に認定されるような病気を発症してしまうケースもあります。
皆が努力することで、少しでも労働災害の発生を防ぐことが大切なのです。