ヒューマンエラーの分類について知りたい! 対策法との関係はあるの?
ヒューマンエラーとは、人為的ミスのことです。人間が作業を行う以上、完全に防ぐことはできません。しかし、よりエラーが少なくなるよう対策を立てることは可能です。また、ヒューマンエラーの危険性を従業員に教育することも、発生防止に役立つことでしょう。
今回は、ヒューマンエラーの分類と対策について解説します。
この記事を読めば、ヒューマンエラー対策はバッチリですよ。安全管理者や衛生管理者の方も、ぜひ読んでみてくださいね。
1.ヒューマンエラーの基礎知識
はじめに、ヒューマンエラーが起こる原因やそれに基づく分類などについて解説します。なぜ、ヒューマンエラーは起こるのでしょうか?
1-1.ヒューマンエラーの定義
ヒューマンエラーとは、「意図しない結果を生じる人間の行為」と定義されています。うっかりミスで機械の操作を間違えたり、交通事故を起こしたりすることも、ヒューマンエラーの一種です。うっかりミスと言うと軽く感じられますが、2005年に福知山線で発生した列車の脱線事故も、ヒューマンエラーが原因で発生しました。
ですから、ヒューマンエラーが起こった場所やミスの内容によっては、大きな被害が出ることも珍しくありません。
1-2.ヒューマンエラーはなぜ起こる?
ヒューマンエラーの原因は過失と故意があります。過失は、単純な操作ミスから過労による判断不足までいろいろなことが原因となっているのです。
一方故意の方は、危険であることを半ば分かっていながら、行為を行ったことが原因で発生します。一例をあげてみましょう。
今は多くの職場で作業工程のマニュアルが作られており、それに沿って作業が行われています。しかし、時間の短縮などを理由に、あえてマニュアルどおりに仕事をせずに事故が起こった場合は、故意のヒューマンエラーです。1999年に茨城県東海村で発生した臨界事故は、このようなマニュアルを無視した作業を行ったことによって発生しました。また、交通違反や個人情報の流出も、故意のヒューマンエラーが原因で起こりやすいでしょう。
1-3.ヒューマンエラーの分類
ヒューマンエラーの原因をさらに細かく分類していくと、以下のようになります。
- 無知や未経験
- 危険軽視・仕事の慣れ
- 不注意
- 連絡不足
- 集団欠陥(赤信号を集団で渡るというような、集団心理が働いた結果の悪習慣)
- 省略行動(マニュアルを無視して作業を単純化するなど)
- 場面行動本能(不慣れな事態に直面し、理性より本能に従って行動した。例:食用油が発火し、水をかける)
- パニック(交通事故を起こしそうになり、アクセルとブレーキを踏み間違えるなど)
- 錯覚(思い違い・聞き違い)
- 年齢による機能低下(40歳以上に多い)
- 疲労
- 単純作業による意識低下
1-4.ヒューマンエラーの怖さ
ヒューマンエラーは、しばしば罰則の対象になります。しかし、いくら罰則を厳しくしてもヒューマンエラーがなくなることはありません。それどころか、罰則への恐怖がヒューマンエラーを引き起こす原因にもなります。実際、前述した福知山線の脱線事故は、運転士の罰則への過度な恐れが発生原因の一つとされました。
つまり、ヒューマンエラーは予防対策を間違えると、かえって事態が悪化することもありえるのです。では、ヒューマンエラーを防止するには、どうすればよいのでしょうか? それは、次の項で解説します。
2.ヒューマンエラーの対策について
この項では、ヒューマンエラーの防止策などについて解説します。ぜひ、参考にしてください。
2-1.ヒューマンエラーは必ず起こる
前述のとおり、ヒューマンエラーを完ぺきになくすことはできません。そう思って対策を立てましょう。また、罰則を厳しくしてもヒューマンエラーは防げません。それどころか、ミスを隠すようになる可能性があります。隠蔽したミスは、隠されているうちに取り返しのつかない失敗になることもあるでしょう。故意のヒューマンエラーを防ぐためには罰則が有効なこともありますが、罰則以外の対策も立てることが大切です。
2-2.分類ごとの対策の立て方
ヒューマンエラーは分類ごとに、有効な対策があります。以下に一例をあげてみましょう。
- 無知や未経験:十分な経験を積んでから作業を任せる。熟練者と共に作業を行う。教育を徹底する。
- 危険軽視や慣れ:定期的に安全教育を行う。労働災害の怖さを周知させる
- 不注意:作業前に指さし確認などを徹底する
- 連絡不足:ほうれんそう(報告・連絡・相談)の習慣をつける。作業日誌などを取り入れる
- 集団欠陥:安全教育を徹底する
- 省略行動:安全管理者などが定期的に職場巡視を行い、発見次第注意する
- 場面行動本能:危険な作業は複数で行い、事故が起きた際の行動を訓練する
- パニック:事故が起きた際の行動をマニュアル化し、定期的な訓練をする
- 錯覚:作業内容を文章化するなど、錯覚が起こりにくい環境作りをする
- 年齢による機能低下:配置転換などを行う
- 疲労:仕事量を見直す
- 単純作業による意識低下:職場に有線で音楽を流すなど、適度に刺激を与える。作業時間を短くする
これはあくまでも一例であり、ほかに有効な方法があればそちらの方を実施してみましょう。
2-3.人間関係の円滑化も大切
上司が感情的に部下をしかりつけることが多い職場であったり、同僚同士の競争が激しかったりすると正確な報告や連絡が行いにくくなります。人間ですから、好き嫌いはあるでしょう。しかし、職場の人間関係を円滑にする努力は必要です。
また、連絡事項は伝言ゲームのように伝えるのではなく、掲示板やイントラネットの社内ページなどを利用して伝えましょう。そうすれば、文章として残りますし再確認も簡単です。
2-4.マニュアルは定期的に見直す
マニュアルは便利ですが、作成してから時間が経つにつれてもっと便利なやり方や効率的な方法が出てくることもあります。また、マニュアル自体が非常にやりにくい手順で作られていたりすると、省略行動が多くなるでしょう。マニュアルは絶対ではありません。定期的に見直しましょう。
2-5.繁忙期は人員を増やす
職種によっては、時期によって忙しさに差があるものもあります。たとえば、お菓子を製造している工場では、クリスマスやバレンタインの時期が近づくと製造量が増えるでしょう。また、ゴールデンウィークや正月などの大型連休の前は、仕事が忙しくなりがちです。1か月近く残業が数時間続けば、疲労によってヒューマンエラーが起こりやすくなります。可能ならば、繁忙期はアルバイトを入れるなどして人員を増やしましょう。
なお、午前中は比較的余裕があり夕方以降に忙しくなる職場では、フレックスタイム制を導入する方法もあります。
3.ヒューマンエラーが発生した場合の対処方法
ヒューマンエラーが発生したら、原因をつき止めましょう。原因が分からなければ対策も立てられません。また、必要ならば安全衛生委員会を開催し、従業員から意見を求めます。安全管理者や衛生管理者の意見も大切です。次に、原因と意見を基に再発防止方法を考えます。必要ならばマニュアルの作成しなおしや、働き方の見直しも必要です。
なお、ヒューマンエラーの原因が本人の健康状態によるものだった場合は、休職も視野に入れた話し合いを行います。社内の安全管理者・衛生管理者では対処できない場合は、社外から安全管理や衛生管理のコンサルタントを招きましょう。
4.ヒューマンエラーに対するよくある質問
Q.ヒューマンエラーは、どの職場でも起こりえますか?
A.はい。人間が働いている職場では、必ず起こると考えましょう。
Q.ヒューマンエラーは、当事者だけの責任になるのですか?
A.いいえ。故意に起こしたものでない限り、当事者だけが責任を負うケースは少ないでしょう。
Q.病気が原因でヒューマンエラーが起こることはあるのですか?
A.はい。心筋梗塞や脳出血は突然発症します。実際に、路線バスを運転中の運転手が心筋梗塞の発作を起こした事例がありました。
Q.ヒューマンエラーで罪に問われることはありますか?
A.はい。交通規則を守らなかったり、社内で禁止されている事項を破ったりした場合は、罪に問われることもあるでしょう。
5.おわりに
いかがでしたか? 今回は、ヒューマンエラーの分類や対策について解説しました。全くミスをしない人はいません。また、職場環境がヒューマンエラーの原因になることもあります。ミスを責めることは簡単ですが、ヒューマンエラーの発生を可能な限り少なくしたい場合は、予防対策に力を入れた方が効果的です。