安全衛生管理組織とは? どんな職場でも設置や整備は必要なの?

安全衛生管理組織とは、職場の安全管理や衛生管理が円滑に行えるように整備されるものです。会社の衛生管理や安全管理は経営者の義務ですが、従業員がたくさん所属している事業所ほど、安全衛生管理組織の整備が大切になります。安全管理者や衛生管理者を選任するのはもちろんのこと、従業員の意見を反映できる組織を整備することも必要です。

そこで、今回は安全衛生管理組織について解説しましょう。

  1. 安全衛生に関する基礎知識
  2. 安全衛生管理組織について
  3. 組織図について
  4. 衛生管理者や安全管理者の資格について
  5. 安全衛生管理組織に対するよくある質問

この記事を読めば、職場の安全管理や衛生管理をスムーズに行うために必要な人数や職務についても分かりますよ。安全管理や衛生管理の仕事をしている方や、安全管理者や衛生管理者の方もぜひ読んでみてくださいね。

1.安全衛生に関する基礎知識

はじめに、職場における安全衛生の定義や安全管理・衛生管理を行う資格などを解説します。どのような活動が行われているのでしょうか?

1-1.職場における安全衛生とは?

労働者には、安全かつ衛生的に仕事を行う権利があります。ですから、経営者や労働者が安全に仕事を行い、健康を保持できるように職場環境を整える義務があるのです。
具体例として、安全管理では従業員がケガをしないように機械にカバーや安全装置をつけたりすることがあげられます。衛生管理では、年1回の健康診断や衛生管理者による職場巡視などがあるでしょう。2016年から50名以上の従業員が所属している事業所で実施が義務づけられた、ストレスチェックも衛生管理の一環です。
安全衛生に関しては、労働安全衛生法という法律で基準や規制が定められています。経営者や労働安全衛生に関わる方だけでなく従業員も、必ず目を通しておきましょう。

1-2.安全管理や衛生管理を行うことのできる資格とは?

従業員が50名以上所属している職場では、職種に関わらず衛生管理者の選任が必要です。衛生管理者は、前項でご紹介した衛生管理活動を行うことのできる国家資格であり、第一種と第二種があります。第一種は、すべての職場の衛生管理を行うことが可能です。第二種は、小売業など比較的危険が少ない職種の事業所で衛生管理を行えます。
なお、この50名の従業員の勤務形態は問われません。パートやアルバイトが49人で社員が1名しかいない事業所でも、衛生管理者の選任は必要です。

安全管理を行うことのできる資格を、安全管理者といいます。安全管理者は従業員が50名以上いる鉱業や製造業など危険を伴う職場に選任が義務づけられており、職場の安全管理だけでなく従業員の安全教育なども仕事です。安全管理者の資格は、一定の実務経験を経た後で、講習を受講すれば取得できます

従業員が50名未満の事業所では、安全衛生推進者を選任し、安全衛生管理を行いましょう。安全衛生推進者は、安全衛生に関する実務経験が一定期間あれば選任することが可能です。

安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者を選任したら、14日以内に最寄りの労働基準監督署に届ける義務があります。

1-3.産業医について

産業医とは、50名以上の従業員が所属している事業所で選任が義務づけられている医師のことです。医師ならば誰でもよいわけでなく、産業医になるための研修を修了した医師であることが条件になります。
1,000人以上が所属している職場や、有害物質・坑内に入る仕事・深夜におよぶ仕事・病原体を扱う仕事を行っている事業所で、500人以上の従業員が所属している事業所は、専任の産業医が必要です。
それ以外の事業所では、産業医の兼任が認められています。

なお、2017年4月から企業の経営者や医療法人の理事長などは、たとえ産業医に選任される資格を持っていたとしても、産業医に選任することはできなくなりました。産業医を新たに選任した場合は、14日以内に最寄りの労働基準監督署への届け出が必要です。

1-4.安全管理や衛生管理の目的

安全管理や衛生管理を行う最大の目的は、労働災害を防止するためです。労働災害というと、危険を伴う仕事に従事した結果起こる事故や病気というイメージがありますが、近年では長時間労働やパワハラなどのストレスが原因で発症する精神的な疾患や、心筋梗塞・脳出血のような病気も労働災害と認められています。
技術の進歩によって有害物質や危険を伴う作業が原因の労働災害は減少傾向にある一方で、仕事によるストレスが原因の労働災害は増加傾向です。
そのため、これからの安全管理や衛生管理は、労働者の精神的な健康の保持が課題となっています。

2.安全衛生管理組織について

安全衛生管理組織は、前述したように安全管理や衛生管理を円滑に行うために整備される組織です。経営者が衛生管理者や安全管理者を選任することも、安全衛生管理組織整備の一環となります。安全管理者や衛生管理者が選任される職場では、安全委員会や衛生委員会の組織も必要です。これは、従業員の安全管理や衛生管理に対する意見を経営者に反映させるための組織であり、安全管理者と衛生管理者の両方の選任が必要な職場では、安全衛生委員会を設置します。

また、従業員が数千人いる事業所の場合は安全管理者や衛生管理者も複数人の選任が必要であり、安全管理者や衛生管理者を統括する、統括安全衛生管理者の選任も必要です。統括安全衛生管理者は工場長など責任ある立場の方が選任されるのが一般的で、資格などは特に必要ありません。

安全衛生管理組織が整備されたら、安全管理・衛生管理を日々の職務として行うことが大切です。組織を整備しても職務を行わなければ、名ばかりの組織になってしまいます。
安全衛生委員会は最低でも月に1回、職場巡視は毎週1回は行いましょう。安全点検や安全教育・衛生教育も定期的に行ってください。

3.組織図について

インターネットを検索すると、安全衛生管理組織の組織図の記入例がヒットします。組織図の提出義務などはありませんが、職場で安全衛生管理組織を周知させるために、作成しておくとよいでしょう。総括的な責任者や実際に安全管理・衛生管理業務を行う方が、組織のどこに属しているかが一目で分かるように作成するのがポイントです。インターネット上にも組織図のテンプレートがたくさんアップされています。必要ならば利用しましょう。安全管理者や衛生管理者、産業医の氏名が変わったら、組織図も作り替えてください。こうすれば、必要事項の伝達や報告もスムーズに行えます。

4.衛生管理者や安全管理者の資格について

衛生管理者や安全管理者は、前述したように従業員が50名以上いる職場には選任が必要です。衛生管理者は職種を問わず、安全管理者も選任が必要な職種はたくさんあるため、取得しておいて損はないでしょう。転職活動にも役立ちます。また、安全管理者や衛生管理者の資格を取得し、それを活用する仕事をしていれば、労働衛生コンサルタント・労働安全コンサルタントの受験資格が得られるのです。

安全管理者や衛生管理者の資格取得を目指している方は、実務経験を積むためにまずは衛生管理・安全管理の仕事を行えるように職場に申し出てみましょう。

5.安全衛生管理組織に対するよくある質問

Q.安全衛生管理組織に整備マニュアルのようなものはありますか?
A.インターネット上には、こちらのような安全衛生管理体制に関するpdfが無料でダウンロードできますので、組織整備に役立ててください。

Q.従業員が数人という職場では、安全管理や衛生管理を経営者自ら行っても大丈夫でしょうか?
A.経営者が安全管理や衛生管理を行ってはいけないという法律はありませんが、経営者は利益が優先になりがちになる恐れがあるので、あまり推奨されてはいません。

Q.安全管理者や衛生管理者はパートやアルバイトでも選任可能ですか?
A.違法ではありませんが、責任の面から判断すると正社員を選任することが理想でしょう。

Q.安全管理者や衛生管理者が未選任の場合はどうなりますか?
A 労働安全衛生法違反により、懲役刑や罰金刑が課せられるでしょう。

Q.安全管理者や衛生管理者の名義貸しはできますか?
A できません。違法です。

6.おわりに

いかがでしたか? 今回は安全衛生管理組織についていろいろと解説しました。安全衛生管理組織は企業の利益に直接かかわりありません。しかし、従業員の安全や衛生に関して無頓着ですと、ブラック企業というレッテルを貼られることもあるでしょう。また、労働災害が発生し、それがニュースになれば会社の信用も落ちてしまいます。安全管理組織はしっかりと整備し、従業員の安全と健康を守りましょう。