労働者の健康管理とはどのようなことを行うの? 重要性と共に徹底解説
労働者には安全で衛生的な環境で仕事を行う権利があり、経営者は安全で衛生的な職場環境を整える義務があります。技術の進歩により、職場でのケガや有害物質が原因で発症する病気などは少なくなりました。その反面、長時間労働やパワハラが原因の健康被害や、精神の不調は増えています。
今回は、労働者の健康管理を行う重要性や、社員の健康管理を担う職務について解説しましょう。
この記事を読めば、職場の環境改善や労働者の健康管理の重要性がよく分かります。衛生管理者の資格取得を目指している方も、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.労働者の健康管理とは?
はじめに、労働者の健康管理基準や、健康管理の方法をご紹介します。どのようなものがあるのでしょうか?
1-1.健康管理の重要性
前述したように、労働者は安全で衛生的な環境で仕事を行う権利があります。労働者の健康を軽視すれば、労働災害発生の原因にもなるでしょう。また、労働者を使いつぶすような経営をしていると、ブラック企業とみなされて社会的な信用も失ってしまいます。
有害物質が原因で労働者の健康が損なわれた場合は、補償の必要があるのはもちろんのこと、公害が発生する恐れもあるでしょう。ですから、労働者の健康管理は社会のためにも大切です。
1-2.労働者の健康管理とは何か?
労働者の健康管理というと健康診断を実施するなどして、肉体的な健康を保つというイメージがあります。それも大切ですが、健康を損なわない働き方ができるように調整をしたり、職場環境を整えたりすることも必要です。たとえば、18歳未満は例外を除いて深夜時間の労働が禁止されています。これも労働者の健康を守るために定められている決まりです。
また、現在は精神の健康を保つことも重要視されています。2016年より50人以上の従業員が所属している職場では、ストレスチェックの実施が義務化されました。これには、うつ病をはじめとする精神の病気を未然に防ぐ効果などが期待されています。
1-3.労働者の健康管理について定めている法律とは?
労働者の健康については、労働基準法や労働安全衛生法によって定められています。一例をあげると、年に一度の健康診断の実施、前述したストレス診断の実施・産業医・衛生管理者の選任などです。違反すれば、罰金か懲役刑が経営者に課せられます。
2.労働者の健康管理を行う職務や職務内容について
この項では、労働者の健康管理を行う職務や、その内容についてご紹介します。どのような仕事なのでしょうか?
2-1.労働者の健康管理を行える資格とは?
労働者が安全で衛生的に仕事ができるように職場環境を整える仕事は、衛生管理と呼ばれています。従業員が10人以上50人未満の職場には、衛生推進者や安全衛生推進者の選任が必要です。安全衛生推進者は工場などの工業的な職場、衛生推進者はそれ以外の職場で衛生管理の職務に就きます。衛生推進者や安全衛生推進者になるには、厚生労働省が定める講習を修了するか、一定期間、衛生管理者の実務経験が必要です。
50名以上の従業員が所属している職場では、業種を問わず衛生管理者の選任が必要になります。衛生管理者は国家資格で、有資格者しか選任できませんので注意しましょう。衛生管理者には1種と2種があり、1種はすべての職場で衛生管理が行えます。2種は、販売業など危険が少ない職場の衛生管理が行える資格です。
これ以外に、労働者の健康相談に乗ったり職場の配置転換などをすすめたりする、産業医があります。産業医は従業員が50人以上所属している職場に選任が義務付けられていますが、専属である必要はありません。条件を満たせば複数の職場の産業医を兼任することができます。複数の職場を兼任する産業医の条件は自治体ごとに異なりますので、最寄りの労働基準監督署のホームページなどで確認してください。産業医になるには、医師の資格を取得した後で専門の研修を修了する必要があります。
2-2.衛生管理者や産業医が行う職務内容について
衛生管理者は、最低でも1週間に1度は職場巡視を行い、職場環境を自分の目で確認したり従業員の相談に乗ったりします。また、健康診断の計画を立て、結果を管理するのも大切な仕事です。健康診断は基本的に年1回ですが、体に有害な物質を扱っている職場の場合は、半年ごとに定められた検査を実施する必要があります。
また、衛生管理者は衛生委員会を組織して、従業員の意見を経営者側に伝える場を設けるのも大切な職務です。安全委員会の設置が義務付けられている職場の場合は、2つを統合して安全衛生委員会としてもよいでしょう。産業医と従業員の橋渡しも職務です。
産業医は、健康診断を実施したり労働者の健康上の相談に乗ったりします。ストレスチェックを行うのも職務の一つになりました。状況に応じ、経営者と面会をして労働者の配置換えや休職をすすめたりもします。
現在は長時間労働やパワハラなどが企業が多く、衛生管理者は産業医と共に問題を把握し、解消に向けて職場環境を改善する役割を担っているところも多いでしょう。
2-3.衛生管理者になるには?
衛生管理者の資格を取得するには、大学の理学部などの定められた学科を修了して厚生労働省が指定した講習を修了するか、国家試験を受けて合格する必要があります。
国家試験を受けるには、一定の実務経験が必要です。詳しくは、安全衛生技術試験協会のホームページを参考にしてください。最短でも大学を卒業し、1年以上の実務経験が必要です。
衛生管理者の試験は、国家資格には珍しくほぼ毎月、全国にある安全衛生技術センターで実施されています。ですから、その気になれば毎月試験を受けることも可能です。センターの位置は協会のホームページに記載されています。試験の申し込みもここから行えますので、試験にチャレンジしたい方は必ずホームページを一読しましょう。
衛生管理者の試験は、国家試験の中では簡単な部類に入ります。
3.労働者の健康管理に関するよくある質問
Q.労働が制限される条件とはなんでしょうか?
A.妊婦・18歳未満・病人などは、労働者が望んでも就労制限があります。また、労働基準法により労働者を無理やり働かせることは禁止されているのです。
Q.衛生管理者は、職場巡視・衛生委員会の設置・健康診断の計画や管理の他、職務はありますか?
A.従業員に衛生教育をすることも職務の一つです。
Q.衛生管理は衛生管理者でないと行えませんか?
A.衛生管理者が選任されていれば、無資格者に協力してもらうことも可能です。
Q.産業医はどのような専門医でもなることができますか?
A.基本的には研修を受けていれば可能です。
Q.ストレスチェックは衛生管理者が行うものでしょうか?
A.ストレスチェックは医師や保健師など特定の資格を取得している方しか行えません。衛生管理者が保健師などの資格を持っている場合は、実施できます。
おわりに
今回は、労働者の健康管理についていろいろとご紹介しました。近年では、過重労働が原因で起こる労働災害がいろいろな企業で問題になっています。過重労働が行われている職場では、衛生管理者が中心となって実態を調査し、改善に向けた取り組みを行っているところもあるでしょう。労働者が安全で衛生的に仕事が行えるようになれば、仕事の効率も上がり、企業の成長にも繋がります。