感染予防を徹底しよう! 方法や注意点、企業における対策は?
「気をつけていても毎年インフルエンザに感染する」「年に数回は風邪を引いてしまう」など、ウイルスや菌に感染している方は多いでしょう。寄生虫・細菌・ウイルス・異常プリオンなどの病原体が感染して引き起こす感染症は、年々さまざまな種類が登場しています。中には予防接種が効かない・対処法がない感染症もあるのです。感染症にならなないためには、感染予防が最も大きなポイントになります。特に、多くの人が働く事業場は感染しやすい場所でもあるので、安全衛生の管理をする衛生管理者が重要な存在になるでしょう。そこで、本記事では、感染症の基礎知識や感染予防の方法・対処法・衛生管理者について詳しく説明します。
この記事を読むことで、感染予防の基礎知識と実践するために必要な情報を得ることができます。感染予防について知りたい方はぜひチェックしてください。
1.感染症の基礎知識
感染予防をするためには、感染症の種類を把握しておかなければなりません。ウイルス・菌などに感染するとどんな状態になるのか、恐ろしさを知ることで予防意識も高めることができます。それでは、種類や怖さ、最近の傾向について見ていきましょう。
1-1.感染症の種類
感染症の主な種類は、咽頭・呼吸器系、咽頭・呼吸器・食中毒・皮膚系、内臓(肝臓)系、内臓(胃腸)系、皮膚系、そのほか、再興感染症、新興感染症の8種類があります。それぞれの代表的な病原体を以下にまとめてみました。
- 咽頭・呼吸器系:インフルエンザウイルス・コロナウイルス・レジオネラなど
- 咽頭・呼吸器・食中毒・皮膚系:黄色ブドウ球菌・セラチア菌など
- 内臓(肝臓)系:肝炎ウイルス
- 内臓(胃腸)系:ノロウイルス・ロタウイルス・サルモネラ属菌など
- 皮膚系:エンテロウイルス・ヘルペスウイルス・真菌症など
- そのほか:ヒト免疫不全ウイルス・SFTSウイルスなど
- 再興感染症:マラリア・ペスト・ジフテリアなど
- 新興感染症:SARS(コロナ)・ニパウイルス・C型肝炎ウイルスなど
1-2.感染症の怖さ
患者数が急激に増えた感染症のことを再興感染症といいます。一時的は減少していましたが、再び注目されるようになった感染症の総称です。代表的な感染症としては、マラリア・結核・デング熱・狂犬病などがあげられます。また、多くの人の生活や生命を脅かす新興感染症(エボラ出血熱・ラッサ熱・エイズ)など、WHO世界保健機構が新たに定めた感染症が多数登場しているのです。今後も感染症のもととなる病原体は増え続けるといわれています。中には、致死率83%のエボラ出血熱や致死率100%の狂犬病など、治療法がないものもあるのです。このように、感染症は早期治療を受けなければ死に至る危険性のある病気で、患者の咳(せき)やくしゃみなどで空気感染するという恐ろしさも持っています。
1-3.最近の傾向
毎年ニュースに取り上げられる感染症といえばインフルエンザウイルスです。厚生労働省の感染症発生動向調査週報(2017年第5号)でも最も注目すべき感染症に取り上げられています。また、最近ではノロウイルスやロタウイルスなどの感染性胃腸炎も懸念されている感染症です。
2.感染予防について
感染予防の対策を立てるためには、感染予防のガイドラインなどをきちんと把握しておかなければなりません。感染予防とは何なのか、基礎知識を習得しておきましょう。
2-1.どういうことか
感染予防は名前のとおり、感染症にかからないための予防をすることです。感染症の三大要素は、感染源・感染経路・感受性のある人(感染を受ける可能性のある人)といわれています。つまり、感染予防は三大要素のつながりを断ち切ることです。感染源を持ちまず増やさない環境を維持し、うがいなどの感染経路を断ち切ります。抵抗力の弱い人は規則正しい生活習慣や予防接種が予防のポイントです。
2-2.企業においての予防について
多数の従業員を抱えている企業は感染予防を徹底しておかなければなりません。なぜなら、職場で感染症患者が発生した場合、職場内での感染が広まるからです。感染が拡大するほど患者数が増え、企業活動に支障が出るでしょう。企業における感染予防は水まわりの設備整備やポスターなどによる注意喚起、ドアノブなど接触面での衛生維持、アルコールによる消毒などが挙げられます。多くの人が出入りする職場だからこそ、環境衛生の状況把握が大切ですね。
2-3.ガイドライン
一般社団法人日本感染症学会のホームページには、複数のガイドラインが掲載されています。たとえば、新型インフルエンザの診療ガイドラインや呼吸器感染症治療ガイドラインなどです。また、東京都感染症情報センターのホームページでは感染症全般から種類ごとのガイドラインが掲載されています。予防計画や家庭・施設における対策も掲載されているのでぜひチェックしてみてください。
3.感染予防の方法について
それでは、感染予防の方法について詳しく見ていきましょう。
3-1.マスクやうがい・手洗いなどの対策法
感染予防の基本といえば、手洗いです。実は、風邪やインフルエンザなど、多くの感染症が手を介して体内に侵入しています。外出時は、ドアノブや電車のつり革・階段の手すりなどいろいろな場所に触れるでしょう。不特定多数の人がさわっている場所ほどウイルスや菌が手に付着しやすいのです。そのため、手洗いは侵入を遮断する方法といえます。また、うがいもウイルス・菌の侵入を防ぐ方法です。外出時にはそとからウイルス・菌が入らないようにマスクの装着を心がけましょう。
3-2.身のまわりの清潔さ
部屋の中や職場のデスクまわりなど身のまわりを清潔にしているでしょうか。ものがごちゃごちゃしているほどホコリ・ダニ・ノミなどがたまりやすく、不衛生な環境はウイルス・菌の繁殖を助長させる要因でもあります。感染予防のためにも、身のまわりを清潔にしましょう。常に整理整頓を心がけておけば感染の可能性も低くなるのです。
3-3.免疫力の向上
ウイルス・菌が体内に侵入しても抵抗できる力があれば感染症にかかりません。抵抗力をつけるためにも、免疫力が上がる生活を心がけましょう。たとえば、睡眠時間を確保する・栄養バランスが整った食事をとる・適度な運動をすることです。規則正しい生活習慣は免疫力を向上させ、健康的な生活を送ることができます。
3-4.予防指導について
企業や医療施設などでは予防指導が大切なポイントになります。予防指導は感染予防に対する関心や注意を持たせること、日常生活における具体的な対策を促すことが主な目標です。指導相手に対して正しい感染予防のやり方を教えていかなければなりません。なぜ予防が必要なのか、きちんと理由を掲げればスムーズに指導ができるでしょう。感染症の流行(りゅうこう)時期には予防接種を促すことも大切な指導です。
3-5.注意点
家庭や職場で感染症が発生してから対策をとっても意味がありません。感染者を出さないためにおこなうのが感染予防です。感染予防本来の目的を忘れないように注意してください。日ごろから体調管理をしっかりおこない、オフィス内の清掃を徹底することが大切です。
4.感染症にかかってしまったときの対処法
感染予防をしていても感染症にかかってしまったとき、どうすればいいのでしょうか。対処法・出勤停止命令・注意点などについて詳しく説明します。
4-1.対処法
最も大切なのは、安静にして睡眠・栄養を十分に補給することです。そうすることで免疫力が高まり、体内に入っているウイルス・菌をそとに出すことができます。また、ほかの人に感染する可能性があるため、会社や学校を数日間休まなければなりません。無理をして出勤・通学してしまうと感染者が増える可能性があります。できるだけ、感染を最小限に抑えることも大切なのです。
4-2.出勤停止命令
感染力の高い病気になったときは出勤停止命令が下される可能性があります。出勤停止命令とは、就業禁止指示のことです。出勤停止命令が発令される一般的な疾病の範囲は以下のとおりになります。
- 感染症法第18条により就業制限措置の対象となる疾病
- 労働安全衛生規則61条により就業制限措置の対象となる疾病
また、上記に当てはまる病気は感染症法第6条により以下の感染症に定められています。
- 一類感染症:エボラ出血熱・SARS・ペストなど
- 二類感染症:急性肺白(かいはく)髄炎・コレラ・鳥インフルエンザなど
- 三類感染症:腸管出血性大腸菌感染症など
- 四類感染症:E型肝炎・A型肝炎・マラリアなど
- 五類感染症:インフルエンザ・ウイルス性肝炎など
4-3.抗生剤について
ウイルス・真菌などの細菌による感染症にかかった場合、抗生剤が治療に使われます。代表的な抗生剤は以下のとおりです。
- ペニシリン系:肺炎球菌やグラム陽性菌に強い殺菌作用
- セフェム系:グラム陰性菌・嫌気性菌に強い抗菌力
- マクロライド系:百日咳(ひゃくにちぜき)菌・クラミジアなどに有効
- キノロン系:クラミジア・グラム陽性菌・陰性菌など幅広い菌に有効
- バンコマイシン:MPSAに有効
また、細菌を撃退する・繁殖を抑えるために使われるのが抗菌薬です。抗菌薬は感染症のもととなる細菌が体内からいなくなるまで使用し続けなければなりません。
4-4.注意点
感染症は早期対応が重要なポイントです。感染者が起こす症状を知ることが早期対応につながるため、きちんと把握しておかなければなりません。感染症の初期症状は病原体によって異なりますが、主に下記の症状が挙げられます。
- 発熱:下痢や吐き気がともなうこともある
- 便の状態:下痢・血便・軟便が続く
- 皮膚の状態:湿疹(しっしん)や発疹(ほっしん)が見られる
- 耳の状態:耳だれが起きる
- 口の状態:口内炎が増える
- そのほか:咳(せき)がひどくなる・食欲不振になる
5.感染予防と衛生管理者について
企業や事業場での感染予防は衛生管理者の大切な仕事です。そこで、衛生管理者とはどんな資格なのか、職務や資格内容について詳しくチェックしていきましょう。
5-1.衛生管理者とは?
国家資格の衛生管理者は、疾病の予防処置など衛生全般の管理をおこないます。労働安全衛生法第12条に基づき、常時使用労働者数50人以上の事業者は免許を受けた者の中から選任しなければなりません。50人~200人以内は1人、200人以上~500人以内は2人、500人以上~1,000人以内は3人以上と決められています。
5-2.職務について
衛生管理者の主な職務は労働環境における衛生管理です。具体的な内容に関しては6つの項目が挙げられます。
- 労働者の危険・健康障害を防止する処置
- 労働者の安全衛生のための教育
- 健康診断の実施と健康の保持増進のための処置
- 労働災害の原因調査と再発防止策
- 労働者の救護に関して必要な処置
- 労働者の負傷・疾病による死亡・欠勤・異動に関する統計の作成
5-3.資格取得について
衛生管理者の免許試験は安全衛生技術センター主催で毎年1回開催されています。受験資格に年齢・性別の決まりはありませんが、実務経験が必要です。「短大・大卒で1年以上」「高卒で3年以上」「学歴に関係なく10年以上」など実務経験年数が決まっています。そのため、実務経験の詳細に関しては安全衛生技術センターのホームページをチェックしてください。
6.感染予防と衛生管理者に関してよくある質問
感染予防と衛生管理者の資格に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
6-1.うがいをするベストなタイミングは?
帰宅時・人ごみから出た跡・のどの調子が悪いとき・空気が乾燥しているときにうがいをしてください。のどの乾燥は防御機能が弱まっている可能性があります。特に、乾燥しやすい冬場はうがいを徹底したほうがいいですよ。
6-2.免疫力をあげる栄養素は?
免疫細胞のおよそ7割は腸に集中しているといわれています。そのため、腸を整えることは免疫力の向上につながるのです。整腸作用のある善玉菌が多く含まれているヨーグルトなどの乳酸菌や納豆などの納豆菌を摂取しましょう。バナナ・たまねぎなどに多く含まれているオリゴ糖と一緒に摂取すれば、善玉菌の効果が高まります。
6-3.出勤停止命令の期間はどれくらいか?
学校保健安全法に基づき、小・中・高校・大学はインフルエンザの場合、基本的に出勤停止期間が「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」と法律で定められています。しかし、会社の場合は具体的に決められていません。そのため、会社の判断にゆだねられているのが現状です。会社によって出勤停止命令期間は異なるでしょう。
6-4.予防接種の効果は?
感染症の予防法として予防接種があります。予防接種をすることで、ウイルスを攻撃するための抗体をつくり出すことが可能です。ただし、100%効果を発揮するとは限りません。厚生労働省が実施した調査によると、予防接種によって65歳以上のおよそ45%が発病を阻止できたという結果が出ています。
まとめ
感染予防は感染症を未然に防ぐために必要なことです。感染症になってからでは遅いので早期対応が大切なポイントになります。特に、企業や学校など多数の人がいる場所では感染予防を徹底しておかなければなりません。感染症に対する注意力を高めつつも、日ごろからできる予防を促す行為が必要になります。その役割を担うのが衛生管理者という資格です。衛生管理者は労働環境の衛生管理をおこなうため、従業員の健康を確保していかなければなりません。正しい感染予防のためにも、必要な知識を身につけておきましょう。