夜勤で働き続ける健康リスクとその対策方法とは?
夜勤がある職場の数は、年々増えてきています。
私たちが便利な生活を求めるほど、夜勤は必要不可欠な働き方になっていくでしょう。
しかし、夜勤は健康へのリスクが高い働き方です。
そこで、今回は夜勤が健康に与えるリスクとその対処法についてご紹介します。
夜勤がどうしても必要な職場もあるでしょう。
大切なのは、どうやって労働者の健康を守っていくかです。
そのためにできることもご紹介します。
興味がある方や衛生管理者の方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.夜勤が健康に与えるリスクとは?
まず始めに、夜勤が健康に与えるリスクについてご紹介します。
夜勤の弊害(へいがい)というと寝不足が真っ先に思い浮かびますが、リスクはそれだけではありません。
1-1.自律神経が不安定になるリスク
人は昼行性です。ですから、朝日を浴びると目がさめて、暗くなると眠くなります。
ですから、夜勤はどうしても疲れがたまりやすくなり、気を抜けば能率が落ちてしまうでしょう。
さらに、昼夜逆転生活の影響を受けやすいのが自律神経です。
自律神経とは、眠気や消化など人が自分の意志でコントロールできない体の機能を調節するもの。
この神経が乱れると、不眠や食欲不振、便秘や下痢などさまざまな体の不調が現れるでしょう。
1-2.がん発症のリスクがアップする
がんを発症する原因はいろいろありますが、ストレスやホルモンの乱れが発症の引き金になることは珍しくありません。
夜勤も長時間やっていると慣れてきます。
また、昼夜逆転の生活をうまく受け入れる人もいるでしょう。
しかし、やはり体にはストレスがたまっていくのです。
看護師など夜勤が多い職場の人は、若くしてがんを発症する可能性が高いという調査報告もあります。
1-3.老化が早まる
睡眠は体にとって大切なリセット機能でもあります。
多少具合が悪くても、寝れば治るという経験をしたことがある方は多いでしょう。
また、寝ている間に細胞は傷ついた箇所を修復するのです。
しかし、夜勤をしているとたとえ昼間に眠っても質のよい睡眠はなかなか取れません。
「長時間眠ったはずなのに、疲れが取れない」という場合は、睡眠が浅く体が十分に休んでいない可能性が高いのです。
ですから、疲労がたまり老化も早まってきます。
夜勤を始めたら急に白髪が増えた、問う経験をした方も少なくありません。
2.夜勤のリスク対策とは?
では、夜勤の際に生じるリスクは、どのように対処すればよいのでしょうか?
この項では、その方法の一例をご紹介します。
2-1.質の高い睡眠を得られるようにできることをする
夜勤といっても、ずっと働き続けるわけではありません。
昼間、つまり私たちが働いている時間が夜勤の方にとっての睡眠時間になります。
しかし、人間は日の光を浴びると体内時計がリセットされて覚醒ホルモンであるセロトニンが分泌されてしまうのです。
ですから、夜勤の方は部屋に遮光カーテンをつけるなど、できるだけ夜と同じ環境を作りだしましょう。
そして、きちんと入浴してパジャマに着替え布団の中で眠ることが大切です。
眠りにくいから、とソファーやこたつ、さらに畳の上で眠ってしまうと疲れが取れません。
さらに、深酒も控えてください。
お酒は眠りを誘いますが、飲み過ぎるとかえって睡眠の質が悪くなるのです。
また、周りの生活音がうるさいという場合は耳栓をするなど工夫をしてください。
2-2.できるだけ生活リズムをつける
夜勤のときはどうしても生活リズムが崩れがちになるという方は、少なくありません。
明るいうちに仕事が終わってしまうと、寝不足でもつい遊びたくなることもあるでしょう。
しかし、体は確実に疲れています。
ですから、普段のときと同じように家にまっすぐ帰って食事を取り、眠りにつきましょう。
また、夜勤が長期間にわたると休日をはさむたびに生活リズムが崩れる、という方も少なくありません。
この場合は、残念ですが休日もできるだけ夜勤に近いリズムで生活しましょう。
そうすれば、休日明けもつらくはありません。
2-3.夜勤と日勤を短期間で入れ換えない
これは、どちらかといえば経営者側の対策です。
企業によっては、夜勤と日勤を週替わりや月替わりなどで入れ換えることもあるでしょう。
看護師のように、月の初めにシフトが発表されるところもあります。
このときに、あまり短期間で日勤と夜勤を入れ換えると、勤務する人は大変です。
ですから、2週間ごとに入れ換えるなどできるだけ体が生活のリズムをつかみやすい感覚で夜勤と日勤を入れ換えましょう。
自分でシフトを調整できるのならば、あまり夜勤と日勤を頻繁に入れ換えないようにしてください。
そうすれば、体調も崩しにくくなるでしょう。
3.夜勤の従業員の健康管理
さて、ここまで記事を読んでいただければ夜勤は昼勤に比べて、体調を崩す可能性が高いことが分かっていただけたと思います。
また、夜勤だけでなく夜勤と昼勤がコロコロ入れ替わるような職場ですと、「夜勤性睡眠障害」といって、眠りたいのに眠れないといった症状が出てくる方もいるでしょう。
そのため、夜勤の従業員は「特別健康診断」をすることが、労働基準法で定められているのです。
通常の勤務をしている方でも1年に1回、会社は健康診断を受けさせなければなりません。
しかし、夜勤など健康リスクが高い勤務者の場合は、それが6か月に1回になります。
夜勤だけならば、そのほかの健康リスクが高い職種のように、特別な検査を受ける必要はありません。
通常の健康診断の検査項目中、職場と産業医が必要と判断した項目を受診しましょう。
衛生管理者はひとりでも多くの従業員に受診してもらえるように、日程などを調節してください。
また、健康面で不具合を訴える従業員がいた場合は、産業医との面談する機会を設けましょう。
4.夜勤の場合、法定休日はどうなるの?
法定休日とは、会社が定めた「従業員を必ず休ませなければならない日」です。
多くの会社が、日曜日に指定しているでしょう。
また、日本の法律では週休1日では週の労働時間を超えてしまいます。
ですから、それ以外にも1日休みを設けるのです。
これを、所定休日といいます。
大抵の会社は土曜日や祝日に定めているでしょう。
夜勤の場合の法定休日というのは、法定休日になった瞬間から翌朝までを指すのです。
たとえば、日曜日が法定休日だった場合は、日曜の午前0時(体感的には土曜日の夜)から、翌朝にかけて。
つまり、昼勤の方と半日のずれが生じます。
ですから、休日出勤をしてもらうときは計算の仕方に注意しましょう。
夜勤の従業員に法定休日にかかる休日出勤をしてもらう場合は、深夜手当てと休日手当ての両方が必要で、そのときは給与の1.6倍の支払いをする必要があるのです。
5.おわりに
いかがでしたか?
今回は、夜勤の健康リスクとその対策についてご紹介しました。
本来ならば、夜勤は病院や公共交通機関の整備など「どうしてもこの時間に働かなければならない」という職場以外は行わない方がよいのです。
しかし、コンビニエンスストアや24時間営業の店が増えるにつれて、夜勤をしなければならない職場も増えています。
ですから、衛生管理者の方は従業員が健康に働き続けられるように、職場環境を整えていきましょう。