フェールセーフとフールプルーフの違いについて~設計思想と事例~

従業員の安全を守る大切な役割を担っているのが「衛生管理者」です。衛生管理者の資格を取得するには、故障時や異常発生時のことも考えなければなりません。そこで、安全を確保するための設計手法「フェールセーフ」や「フールプルーフ」の違いについて説明します。

フェールセーフとフールプルーフの設計思想・事例の紹介、違いと注意点など一緒に見ていきましょう。フェールセーフとフールプルーフの違いについて知りたい人はぜひ参考にしてください。

  1. フェールセーフの設計思想と事例
  2. フールプルーフの設計思想と事例
  3. 安全を確保するための注意点

1.フェールセーフの設計思想と事例

誤操作や誤動作が起きたとき、従業員に危険がおよぶ恐れがあります。従業員の安全性を確保するためにも、安心できる設計手法が「フェールセーフ」です。フェールセーフの設計思想と事例について詳しく説明します。

1‐1.誤りが生じたとき安全に導く設計思想

工場や作業場ではさまざまな機械を扱っているでしょう。機械を扱う際、十分に注意しなければなりません。正常に機能するかどうか定期的な点検も必要になります。しかし、いざというとき誤操作や誤作動、故障が起こり危険を引き起こす可能性があるのです。

何かしら故障が起きたとき、安全方向に制御するのが「フェールセーフ」になります。必ず故障することを前提にしている設計手法の1つです。フェールセーフは安全性確保のための機能だと思いがちですが、「誤りが生じたとき安全に導くこと」が設計思想になります。「故障が起きたこと」を前提に考えているのです。多重の安全装置を設置しているのはほかの手法になるでしょう。

1‐2.「フェールセーフ」を導入している事例

フェールセーフについてわかりやすく説明するのなら、「新幹線」が代表的な例です。私たちの移動手段になっている新幹線はとても速いスピードで動いています。もし、新幹線が走っているときに地震が起きたらどうなるでしょうか。地震が起きるとレールが乱れて車体がななめになってしまいます。乗客の中からケガ人が出てしまうでしょう。安全を確保するために、車両を安全に導く必要があります。

そこで、フェールセーフの登場です。フェールセーフを導入=車両を緊急停止するシステムになるでしょう。制御システムはもちろんのこと、フェールセーフの設計思想が必要不可欠になります。現在でも、フェールセーフの質を高めるための工夫を続けているのです。

1‐3.必ず起こる事故を想定している

たとえ、「事故は起きない」と思っていても100%とは限りません。地震や台風などの自然災害や人為的ミスによって事故が起きる可能性はあります。いくら気をつけていても、必ず起こる事故を想定してシステムを構築しているのが“フェールセーフ”です。機器やシステムを構築する際は、必ず「基本」があります。

基本をもとに部品やシステムを設計しているものです。フェールセーフの基本は、必ず起こる事故を想定しているのが特徴になるでしょう。起こる事故を防ぐにはどの部品を使うべきか、細かく考えているのです。事故は必ず起きるため、安全はあり得ない考え方が“フェールセーフ”になることを覚えておいてくださいね。

フェールセーフの設計思想とは、事故が起こることを想定して作られる安全対策なんですね。
はい。これがあれば、より安全に安心して作業ができます。

2.フールプルーフの設計思想と事例

2‐1.誤操作・故障をしないように配慮した設計

産業分野においてさまざまなシステムや機器を使う機会は多いでしょう。システムや機器は、扱う人によって誤動作・故障を招いてしまいます。「フールプルーフ」はフェールセーフと同じ「安全」に配慮した設計手法です。しかし、設計思想に違いがあります。

フェールセーフは必ず起きる誤作動・故障を考えて設計する手法ですが、「フールプルーフ」は事前に誤作動・故障を防ぐために配慮した設計思想です。従業員の健康状態によっては集中力が低下したまま、システム・機器を扱うケースがあります。集中力が低下している状態でも安全に作動できるよう設計しているのです。フェールセーフと似ているようですが、根本的な考え方はまったく違います。

2‐2.フールプルーフの事例

フールプルーフを導入している事例は、私たちの身近なところにもたくさんあります。主に、産業分野における設計思想ですが、日常にあふれているものにも設計思想が見つかるでしょう。たとえば、毎日使うことが多い「洗濯機」です。洗濯機はフタをきちんと閉めなければ動かないようになっています。

安全性を確保するために必要なシステムです。フタを閉めないと稼働しない洗濯機は、まさにフールプルーフの設計思想が入っていると言えるでしょう。さらに、キャップの紛失・幼児の誤飲を防ぐ“ボトルと一体化しているキャップ”などもフールプルーフに該当します。視野を広く持つと、たくさんの場所でフールプルーフが活躍しているのがわかるでしょう。

身近なところにもフールプルーフの設計思想が活用されているんですね。
はい。どんな所にもフールプルーフの設計思想は必要です。

3.安全を確保するための注意点

3‐1.起きる事故を想定する

フェールセーフやフールプルーフなどの考え方は、危険を防ぎ安全を確保するためには大切なことです。特に、危険がひそんでいる作業場や工事現場では最も大切な要素になるでしょう。安全を確保するためには、現場の状況を明確につかんでおかなければなりません。現場の状況を把握して、起きる事故を想定しておきましょう。

「きちんと気をつけておけば絶対に安全」という甘い考えはNGです。現場で働いている人は必ずしも毎日同じ健康状態であるわけではありません。具合が悪いとき、集中力が低下しているときもあります。人為的なミスで大事故につながる可能性もあるのです。

現場によって扱う機器やシステムは異なるでしょう。起こり得る誤動作、ミス、故障からやってくる危険を踏まえて、安全性を確保していかなければなりません。

3‐2.従業員たちへの注意喚起や教育も必要

安全を確保するためのフェールセーフ・フールプルーフはとても大切です。設計思想の中には入っていませんが、従業員たちへの注意喚起や教育も同じくらい大切なものになるでしょう。事故が起きたときの対処法や処置をしっかり現場に伝えておかなければなりません。衛生管理者は従業員たちの危険意識を高め教育をほどこす重要な役割を担っています。わかりやすく説明できるよう、会社と連携しながら教育をしていきましょう。

また、従業員たちが不安に思っていること、疑問に感じていることも聴き取り調査するといいですよ。現場で働いている人たちの意見は安全を高めるものとして必要不可欠でしょう。書面で確認するよりも現場で生の声を聞いたほうがより的確な手法で安全を高めることができます。従業員たちとのコミュニケーションも常に取っていかなければならないでしょう。

安全教育もフェールセーフ・フールプルーフの一種なんですね。
はい。そのため、面倒くさいと思わず定期的に行いましょう。

まとめ

フェールセーフやフールプルーフの設計思想、事例、安全を確保するための注意点について説明しました。いかがでしたでしょうか。安全を確保する点では似ている2つの設計思想ですが、根本的な考え方はまったく異なります。必ず起きる事故を想定してシステムを構築しているのが「フェールセーフ」、起こる誤操作・ミスを未然に防ぐために配慮しているのが「フールプルーフ」です。

それぞれの設計思想をきちんと理解することが、衛生管理者としての基礎になります。現場で働いている従業員の安全を確保するためにも、基本的な考え方や基礎を身につけてくださいね。従業員を危険から守るのは衛生管理者の大切な役割です。