熱傷時の応急処置について~熱傷のレベルや知っておきたい労災~
衛生管理者は職場で働く人たちの安全を確保しなければなりません。
従業員は衛生管理者がいるからこそ、安心して働くことができます。
もし、熱傷などの労災が起きても迅速な対応が必要です。
これから、熱傷時の応急処置や熱傷のレベル・深度判定、熱傷と労災について詳しく説明しましょう。
衛生管理者資格取得のために勉強している人は、ぜひ参考にしてください。衛生管理者として働くためには必要な知識です。
1.熱傷時の応急処置
ヤケドなどの熱傷時は、応急処置が最も大切になります。
応急処置の仕方によっては軽症のうちで治まるでしょう。
しかし、少しでも処置が遅れるだけで重症になってしまいます。
今後の生活に支障が出るほど影響があるため、応急処置の仕方をきちんと把握しておきましょう。
1‐1.すぐに熱傷した部分を水・氷で冷やす
熱傷時の応急処置は、すぐに冷たい水や氷で冷やすことです。
近くに蛇口があれば、熱傷した部分を水道水で冷やしてください。
基本的に、痛みがなくなるまで冷やします。
「少し冷やしただけで大丈夫」と思う人は多いですが、中途半端だと後で痛みが出てくるでしょう。
蛇口がない場合は、氷をいれた袋で冷やす、保冷剤を使うなどとにかく“冷やす”ことが大切です。
もし、服を着たまま熱傷をした場合は、無理に服を脱がないでください。服の上から冷やしましょう。
無理に服を脱いでしまえば、熱傷した皮膚が服に貼りつきはがれてしまいます。
余計に熱傷が悪化してしまうので要注意です。
水ぶくれができてしまっても、絶対につぶしてはいけません。
痛みが治まるで冷やし続け、清潔な状態を保ってください。ガーゼなどを当てておくとつぶさずに済むでしょう。
1‐2.広範囲の熱傷は体を冷たいタオルでつつむ
熱傷部分が広範囲でなければ、水道水で冷やし続けることができます。
しかし、熱傷の範囲が広いと水道水では十分に冷やすことができません。
よって、広範囲の場合は水につけて冷やしたタオルを全体につつんでください。
タオルを何枚も使用して全体的におおいましょう。
また、浴槽に水をためて体をつけるのも効果的です。何よりも“冷やす”ことが大切だと覚えておいてください。
ただし、全身を冷やしすぎてしまうと「低温症」になる可能性があります。冷やしても、低温症にならないよう注意してくださいね。
冷やす温度はおよそ10度~15度が良いと言われています。ヤケドの状態によっては、5分~30分と冷やす時間が異なるでしょう。
ヤケドが軽症であるほど、冷やす時間も少なくなります。
1‐3.消毒剤などの薬は使わない
ヤケドの状態によっては、皮膚がはがれるケースもあります。
皮膚がはがれているとき「消毒しなければならない……」と思いますが、消毒液などの薬は絶対に使ってはいけません。
特に、ヤケドの状態がひどい場合は冷やすこと以外の処置は逆効果になります。
患部が余計に赤くはれあがる恐れがあるので、薬は使用しないでください。
冷やすことだけに注意して、すぐ119番通報しましょう。
できるだけ早めに専門医療施設に診せることが大切です。
また、アクセサリーや腕時計などの装飾品はすぐにはずしてください。アクセサリーはヤケドの部分に貼りつくので、患部に悪影響をおよぼします。
2.熱傷のレベルと深度判定
2‐1.1度~3度にわかれている熱傷のレベル
熱傷の具合によって、1度・2度・3度のレベルにわけることができます。
人間の皮膚は、表面から表皮・真皮・脂肪の3段階になっているため、熱傷のレベルも3段階です。
最も軽症の「1度熱傷」は、数日でヤケドも治ります。
表皮がヒリヒリするだけで、日焼けに起こる症状とほとんど同じです。すぐに冷やしておけば自然治癒できるでしょう。ヤケドの跡も残りません。
しかし、「浅達性2度熱傷」からはヤケドの跡が残ってしまいます。
浅達性2度熱傷は強い痛みが特徴的で、水ぶくれが発生するでしょう。
そして、さらにひどいレベルである「深達性2度熱傷」は、真皮まで影響をおよぼします。痛みはありませんが、皮膚が白く変わるでしょう。
最も重症の「3度熱傷」になれば、すべての皮膚層に影響をおよぼします。
皮膚の感覚がなくなると同時に、赤くなるでしょう。機能障害を起こす可能性もあるので要注意です。
2‐2.熱傷の面積による判定
1度・浅達性2度・深達性2度・3度と熱傷の深度判定ができます。
ヤケドの状態によって判断できますが、深度判定は“面積”も関係しているのです。
熱傷の面積によっては入院治療が必要になるケースもあります。
熱傷の面積による判定は「自分の手のひら」が目安になるでしょう。
自分の手のひらの大きさを確認してください。体表面全体の1%に当てはまる大きさになります。
そして、2度熱傷が手のひらの⒑個分だと⒑%、3度熱傷が2個以上あると2%という計算です。
熱傷のレベルが高く、面積が広いほど治療に時間がかかります。応急処置だけでは対処の仕様がないため、すぐに専門医療施設で治療してもらいましょう。
3.熱傷と労災について
3‐1.労災とは?
「熱傷を負った場合、労災申請できるのか?」という質問は非常に多いです。
熱傷と労災について把握する前に、「労災」について詳しく知らなければなりません。簡単に説明すると、労災とは“業務起因による、業務遂行中のケガ」を指しています。
つまり、仕事をしているときに起こったケガ全体が労災になるのです。
たとえば、製造業において熱湯を使う機会があるでしょう。
実際、職業別に見てみると、製造業や飲食業における熱傷が多いです。業務中の熱傷であれば、労災に当てはまることは間違いありません。
すぐに病院で診てもらい、労災申請をする必要があります。
治療する際に自己負担した金額がすべて戻ってくるでしょう。
死亡事故だとしても、労災の条件に当てはまるのなら申請できます。
3‐2.労災を起こさないための対策が必要
仕事・作業中に起こる熱傷は、すべて労災です。
実際、製造業・建築業・飲食業では熱傷による労災が多数起きています。死亡事件も起こっているため、十分に注意しなければなりません。
衛生管理者は応急処置を把握しておかなければなりませんが、労災が起こらないための「対策」も必要不可欠です。
どちらかと言うと、「対策」が最も大切なポイントになります。
熱湯や蒸気など、ヤケドをする恐れがあるものはきちんと対策をほどこしておきましょう。
また、作業場で使う機械は定期的な点検・メンテナンスが大切です。
実際に、メンテナンスをしていなかったせいでバルブのネジがゆるみ、熱湯が入っている容器が落ちたというケースが起きています。
熱湯が体にかかってしまえば、大変なヤケドを負ってしまうので要注意です。
労災が起きた後では遅いので、危険なところは入念に点検・メンテナンスをしておきましょう。
4.まとめ
熱傷時の応急処置や熱傷のレベルと深度判定、熱傷と労災について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
従業員の安全を守る衛生管理者にとっては、必要不可欠な知識です。
いざというときのためにも正しい応急処置の仕方を身につけておきましょう。
ヤケドの応急処置は、とにかく“冷やす”ことが大切なポイントになります。ひどい状態ほど、冷やすこと以外の処置をしてはいけません。
状態をしっかり見て適切な判断をしてくださいね。