危険予知訓練って何? 目的や進め方をご紹介します。
技術の進歩によって、一昔前までは危険と隣り合わせだった仕事も安全に行えるようになりました。
しかし、従業員の不注意によって事故が起こる可能性はゼロではありません。
そこで、より安全に仕事ができるように行われるのが危険予知訓練です。
今回は、危険予知訓練の目的と進め方についてご説明しましょう。
危険を完全に予知することはできません。
しかし、「こんな危険があるよ」と意識することによって、事故を未然に防ぐことができます。
工事や製造など、従業員の不注意が事故につながるような職場に勤務している方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
目次
1.危険予知訓練の目的とは?
危険予知訓練とは、事故や災害を未然に防ぐことを目標にその作業に潜む危険性を予想し、指摘しあう訓練のことです。
ローマ字表記の「危険予知訓練」の頭文字をとってKY訓練、KY活動とも言います。
また、ツールボックスミーティング やその頭文字をとってTBMと呼んでいる企業もあるでしょう。
避難訓練のように改まって行うこともありますが、朝礼などで「こんな事故が同業者でありましたが、気をつけましょう」という注意喚起や危険な機械を使うときの指さし確認なども、危険予知訓練の一種です。
今は、技術が進歩して、より安全に衛生的に仕事が行えるようになりました。
しかし、従業員の不注意やちょっとしたミスで事故が起こることは、珍しくありません。
事故の種類や規模によっては、近隣の住人や製品を購入した人にも被害が出ることもあるでしょう。
人は、他人の「危ないな」という行為には気づきやすいです。
また、自分の行動が危うく事故を起こしそうになった経験がある方もいるでしょう。
その発見や経験をほかの従業員と共有できなければ、単に「危なかった」で終わってしまいます。
しかし、危うく事故につながりそうになった行動の話など、できる機会はなかなかありません。
そこで、危険予知訓練という場を設けることで従業員全員で「事故につながる行為」を予想し、指摘しあうのです。
2.危険予知訓練のやり方とは?
では、危険予知訓練はどのように行えばスムーズに進むのでしょうか?
この項では、具体的な進め方をご説明します。
ぜひ参考にしてくださいね。
2-1.職場の現状を確認する
まずは従業員同士で、職場の現状を確認しましょう。
そのうえで、どんな危険が潜んでいるか意見を出し合います。
たとえば、「通路に段ボールが放置されていることが多いので、つまづきそうになる」などですね。
大切なのは、どんな事故が予想されるのか具体例を出すこと。
単に「危ない」だけではいけません。
「転倒する」「切断する」「破損する」など、できる限り被害を具体的に想像してください。
その中から、最も多くの従業員に起こりそうなできごとを1~2個、選出しましょう。
2-2.対応策を話し合う
選出した「事故が起こる可能性のあること」に対して、従業員の対処法を出し合いましょう。
「自分ならこうする」ということを、ひとりひとりに考えてもらうのです。
これも、具体的な答えが必要。
単に「気をつけます」ではいけません。
そうやって意見を出し合うことで、職場に潜む危険に対する意識も高まるでしょう。
また、ひとりひとりの注意力も向上するのです。
2-3.新入社員から意見を言っていこう
危険予知訓練は、ある程度の「慣れ」が必要です。
職場を注意深く観察していないと、事故につながるできごとは発見できません。
また、事故を予防する対策もなかなか思いつかないものです。
新入社員や中途入社の従業員を加えた危険予知訓練では、まず彼らから意見を聞きましょう。
後になるほど、言うことがなくなってしまうことが多いのです。
また、危険予知訓練は、話し合いを進めるリーダーが必要。
安全管理者や、衛生管理者がリーダーになることも多いでしょう。
このリーダーが主に発言をし、話を締めくくる危険予知訓練は、意味がありません。
ほかの従業員は一方的に言われたことを聞くだけですので、マニュアルを読んでいるのと変わりがないのです。
危険予知訓練の目的は、従業員自信が危険に気づき、対策方法を考えること。
時間はかかってもよいので、皆で話し合える雰囲気を作っていきましょう。
それには、何度も訓練をする必要があります。
3.気づきとマニュアルの違いとは?
どの職場にも、安全に作業をするためのマニュアルがあるでしょう。
機械のあつかい方や、仕事の仕方、禁止事項まで定められている職場もあると思います。
しかし、人は仕事に慣れると、決まりきった手順がわずらわしくなるものです。
「ここを省略したら、もっと仕事が速く終わるのに」と思うことは珍しくありません。
また、仕事が忙しいとつい作業行程を省略することもあるでしょう。
定められたマニュアルを勝手に省略していった結果起きた事故の一例が、東海村JOC臨界事故です。
この事件の原因は、従業員が「このくらい大丈夫だろう」と作業行程をどんどん簡略化したことでした。
危険予知訓練は、「これくらい大丈夫だろう」という根拠のない楽観的な考えを防止するためのものでもあります。
従業員全員で、「こんなことをしていれば、こんな事故が起こるよ」と具体的に話し合えば、想像力が働くでしょう。
想像力も事故を防止する大きな力になります。
ここに、マニュアルと「気づき」の差が出てくるのです。
マニュアルを読んでもピンとこなかったことも、職場の現状に照らし合わせて従業員の意見を聞けば重要性が理解できるでしょう。
4.リーダーは従業員の意見を引き出すことが大切。
危険予知訓練は、従業員が意見を出し合っていかなければ進みません。
しかし、年配の人になるほど、ディスカッションが苦手な方が多いでしょう。
そこで、リーダーの質問方法が大切になってきます。
質問は、できるだけ具体的に行いましょう。
職場全体ではなく、一部分をあげ、「ここで気になっていることを教えてください」と問いかけるのです。
いつも働いている場所なら、危険予知もしやすいでしょう。
また、危険予知訓練は整理整頓の悪さや仕事の仕方を叱るものではありません。
それはまた、別の機会に行いましょう。
あれもこれもやろうとすると、本来するべきことが見えなくなります。
5.おわりに
いかがでしたか?
今回は、危険予知訓練の目的ややり方についてご説明しました。
まとめると
- 危険予知訓練は、職場に潜む危険を従業員が予想して対策を立てることである。
- 危険予想も対策も、具体的な案を出すことが大切。
- 自分で気づくことは、マニュアルを読んで守ることよりも事故防止の効果がある。
- リーダーは訓練の進み方に気を配っておこう。
ということです。
会社では「講習会」などは行われますが、「話し合って対策を立てあう」ことには慣れていない人も多いでしょう。
実際に、危険予知訓練の進め方に悩んでいる方も少なくないようです。
そのため、「進め方のマニュアル」なども何種類か存在しています。
リーダーになったら、まずはマニュアルをお手本に会議を行ってみましょう。
最初はうまく行かなくても、何度かくり返すうちにコツがつかめてきます。
また、危険予知訓練に参加することになったら、普段から気になっていることを文章として書きだしておくのもお勧めです。
発言するときに、要点がまとまっていれば理解されやすいでしょう。