残業を減らす取り組みとは? 職場全体で取り組むことが大切です。

かつて、「モーレツ社員」という言葉がありました。
家庭をかえりみず、毎日夜遅くまで残業をしている社員を指す言葉ですが、それがよい意味で使われていた時代もあったのです。しかし、残業の増加は従業員の心身を損ねます。
そこで、今回は残業を減らす取り組みについてご紹介しましょう。
ただ「残業をやめましょう」だけでは、効果はありません。
具体的な対策が必要なのです。残業を減らすことは従業員の健康にも影響があります。
興味がある方や衛生管理者の方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

目次

  1. 残業のデメリットとは?
  2. 残業を減らす取り組みはどうすればいいの?
  3. オーバーワーク気味の従業員への対処法とは
  4. おわりに

1.残業のデメリットとは?

まず始めに、残業のデメリットについてご紹介します。
残業が続くと、どんな悪影響があるのでしょうか?

1-1.企業の業績が悪化する

労働基準法によると、残業をした場合には企業が残業代を支給しなくてはなりません。
労働時間が8時間を超える残業の場合は通常の賃金より25%増し、22時を超える残業の場合は50%増しの残業代が発生します。
つまり、社員が残業をすればするほど企業は人件費がかかるわけです。
ですから、ブラック企業の場合は社員にサービス残業(残業代がつかない違法な残業)を強要することも多いでしょう。

1-2.能率の悪化

人間の集中力は何時間も持ちません。
長く働けば、それだけ成果が上がるわけではないのです。
ですから、残業をやった割には仕事が進まないことも多いでしょう。
さらに、残業をすれば空調費や電気代もかかります。

1-3.健康状態の悪化

毎日夜遅くまで働いて朝早く出社する日々が続けば、当然疲労は蓄積していきます。
不思議なことに、人は限界以上に疲れるとかえって疲労を感じなくなるそうです。
ですから、「まだまだ頑張れる」と思っているうちに一気に体調が悪化することもあるでしょう。
また、慢性的な疲労と寝不足は脳卒中や心筋梗塞などの原因にもなります。
残業を月100時間以上続けていた方が急に亡くなった場合は、過労死として認められることもあるのです。
さらに、精神的な疲労も無視できません。
疲労がたまってくるとうつ状態になり、最悪な選択をする可能性もあるのです。

2.残業を減らす取り組みはどうすればいいの?

では、残業を減らす取り組みはどうすればうまくいくのでしょうか?
この項では、個人でできることと職場が一丸となって取り組まなければいけないことを、それぞれご紹介します。

2-1.個人でできる取り組みとは?

残業は、言い換えればオーバーワークです。
業種によってはどうしても仕事に波があり、残業をしなくてはいけないこともあるでしょう。
しかし、ほぼ毎日残業をしているという場合は、自分のキャパシティを超える仕事を受けている可能性があります。
ですから、自分が引き受けている仕事をもう一度確認してみてください。
明らかに量が多すぎるという場合は、上司に訴えましょう。
特殊な資格などを持っている場合は、従業員を増やしてもらう必要もあります。
また、自分の働き方も見直してみてください。

  • ダラダラと仕事をしていないか
  • タバコ休憩やトイレ休憩が多すぎないか
  • 仕事の優先順位は正しいか

などを確認してみましょう。
そして、直せるところは直してください。

2-2.職場でできる取り組みとは?

残業が当たり前になってしまうと、仕事は非効率的になりがちです。
人は何時間も集中して働き続けられません。
「どうせ残業になるのだから」とダラダラ働いていれば、労働時間の割に仕事は進まないでしょう。
ですから、思いきってノー残業デーを作ってください。
18時になったら有無をいわさず空調と電源を切り、社員を退社させるくらい徹底して行いましょう。
そうすれば、社員は定時までに仕事を終えなくてはなりません。
タバコ休憩やトイレ休憩なども減るはずです。
さらに、会議やミーティングを立って行う会社もあります。
いすがない分、必要なことを手早く短時間で話し合えるでしょう。

2-3.経営者ができることとは?

企業の経営者が残業は仕事熱心の証拠、と思っている限り残業は減りません。
30年ほど前までは、長く働くほど優秀な社員だと思われていたこともありました。
しかし今では、より短い時間で、効率的に仕事を片付ける社員こそ優秀なのです。
電子機器の進化により、仕事は格段に効率的に進められるようになっています。
ですから、ムダを削れば残業をしなくて済む仕事はたくさんあるでしょう。
また、仕事の量と従業員の数が合っているかどうかも大切です。
長引く不況で、人員をぎりぎりまで減らしている企業もあるでしょう。
しかし、ひとりでできる仕事量には限りがあります。
24時間働き続けられる人もいません。
どう頑張っても日常の仕事が終わらないという場合は、人手不足が原因の可能性が高いでしょう。
パートやアルバイトなど、短時間勤務でも人が増えれば違います。
人員の補充を検討してください。

3.オーバーワーク気味の従業員への対処法とは

さて、今ご紹介した残業を減らすための対処法は、残念ながらすぐに効果は出ません。
今現在、オーバーワーク気味の社員がいる場合はどうすればよいのでしょうか?
衛生管理者ができることをご紹介します。

3-1.オーバーワーク気味の従業員を見つける方法

衛生管理者の業務に、職場巡視があります。
そのときに、様子がおかしいなと思う社員がいたら声をかけましょう。
人は疲労がたまると顔色が悪くなったりイライラしたりします。
また、ふいにボーっとしたり感情の起伏が激しくなったりすることもあるでしょう。
そんな社員がいたら、「何か困っていることはありませんか?」と声をかけてください。
大丈夫です、と返された場合でもタイムカードをチェックしてみましょう。
月の残業が80時間を超えている場合は要注意です。

3-2.産業医と面談の機会を設ける

前述しましたが、疲労がたまりすぎるとかえって自覚がなくなります。
そこで、産業医と面談してもらい、自分の疲労具合を自覚してもらいましょう。
人によっては産業医との面談で、初めて本音が出るかもしれません。
また、「過労」と診断された場合には、職場の業務改善を経営者や職場の責任者に提言しましょう。
さらに、本人を異動させたり休職させたりできるように上司とかけ合うこともできます。
これらの行動は、早ければ早いほど本人の職場復帰も早くなるでしょう。

4.おわりに

いかがでしたか?
今回は、残業を減らす取り組みの方法についてご説明しました。
まとめると

  • 残業をしすぎると会社の業績や社員の健康状態が悪化する。
  • 会社全体で残業をなくす取り組みを行うことが大切。
  • オーバーワーク気味の社員がいたら、産業医と面談してもらい休職を促す。

ということです。
日本の会社は全体主義といわれています。
社員がひとりだけ定時で退社しようとしても、許されない雰囲気があるところは多いでしょう。
ですから、残業を減らす取り組みは社員だけで行っても効果はありません。
まずは、経営者から「残業はできるだけ避けよう」という意識を持つことが大切。
また、サービス残業を社員に強制すると、労働基準監督署の指導が入ることもあります。
そうなると、ブラック企業というレッテルを張られるかもしれません。
そんな不名誉は避けたいものです。
ですから、残業代はきちんと払いましょう。
これが、残業をなくそうという意識につながることもあります。