過労死を防ぐために企業ができる対策~衛生管理者の重要性~

最近は、「過労死」を取り上げている番組をよく見ます。
インターネットでも話題になっている「過労死」の実態について説明しましょう。
働きすぎる、無理な労働時間を強いられることで過労死になってしまうケースが多く、重労働を強いられる企業のことを“ブラック企業”とも呼んでいます。
過労死問題を解決するには、「衛生管理者」が必要不可欠です。
衛生管理者はどのような役割を果たすのか、過労死等防止対策推進法など説明します。

目次

  1. 過労死の実態について
  2. 過労死問題における衛生管理者とは
  3. 過労死等防止対策推進法とは
  4. まとめ

1.過労死の実態について

過労死が原因で裁判に発展したケースも、数多く起きています。
実際のところ、働きすぎで命を落としている人もたくさんいるのです。
過労死とは何なのか、過労死の実態について詳しく説明しましょう。

1-1.過労死とは?

過労死の実態を知る前に、「過労死」について知っておきましょう。
過労死とは、長時間労働・残業、休日がないほど働き続けることで、肉体的・精神的に負担がかかることを指しています。
負担がかかりすぎると、心臓まひや過労で死亡するのです。
過労によって死亡することが「過労死」と判断できます。
実際に、働きすぎて倒れた人が亡くなったというケースも少なくありません。
働きすぎると、さまざまな病気が発症する恐れがあります。
心筋梗塞やくも膜下出血、脳出血、急性心不全、虚血性心疾患など、死に至る病気になりやすいのです。
過労は、私たちの肉体だけでなく、精神的にも大きい負担をかけてしまうので注意しなければなりません。

1-2.年々増え続けている過労死

外国から見ても、日本人は働きすぎると言われています。
日本の労働時間は、OECD加盟国の中で最も1番長いというデータが出ているのをご存じでしょうか?
休日も含めた日本人の平均労働時間は、およそ375時間になっているのです。
OECD加盟国の平均労働時間は259時間なので、とても長い時間働いていることがわかるでしょう。
厚生労働省が発表したデータによると、2009年~2013年度の5年間における労災請求件数は、過労死1,377人、過労自殺者は876人になっているのです。
過労によって亡くなった人が1,000人以上もいることに驚きますよね。
さらに、過労によって精神的に追い詰められ、自殺をした人も800人以上いるのです。
このように、過労死は、年々増え続けています。

1-3.過労死で多い年代と職種

過労によって亡くなっている人が多いことを実感したと思います。
厚生労働省のデータによると、過労死でが多い年代は、「40歳~50歳代」だとわかりました。
先ほど説明した2009年~2013年度までの過労死者数は、1,377人までのぼります。
1,377人のうち、847人が40歳~50歳代なのです。
過労死の半分以上を40歳~50歳の人で占めていることがわかりますよね。
職種別に見てみると、過労死で多いのは「輸送・機械運転従事者」です。
専門的・技術的職業やサービス職業者も多いでしょう。
バスの運転者が居眠りで事故をしたニュースも多いですよね。
過労死で多い年代や職種を見てみると、過労死の実態がわかりますよ。

2.過労死問題における衛生管理者とは

2-1.衛生管理者の役割

「衛生管理者」は、50人以上が働いている事業場で必ず選任しなければいけません。
事業場の人数が増えれば増えるほど、衛生管理者の人数も増えていきます。
50人~200人以内の事業場が1人ならば、201人~500人の事業場では2人が必要です。
衛生管理者は、主に、労働者の健康に異常がないかどうか、作業環境の衛生や作業条件、衛生保護具や救急用具の整備、労働者たちの衛生教育、健康相談など、幅広い職務になっています。
簡単に説明すると、事業場で働いている人たちの衛生・健康面を確保する、大切な役割を担っている人物です。
労働者の負傷や疫病、死亡、欠勤なども衛生管理者の仕事になるでしょう。

2-2.過重労働をなくすために働く衛生管理者

過労死を防ぐためにも、衛生管理者は大切な役割を担っています。
事業場で働いている人たちの健康を守るためには、過重労働をなくさなければなりません。
過重労働をなくすために、衛生管理者は事業者側と、過労死・過重労働による健康障害が起こらない環境をつくることが大切です。
きちんと、事業者が労働者に向けて「衛生管理者」の存在を表明するからこそ、労働者たちも安心して働くことができます。
衛生管理者は、過重労働対策の実施計画や面接指導の実施、労働者に対して過労死対策の普及など、さまざまな対策・計画を立てていかなければなりません。
過重労働をなくすためにどうすれば良いのか、衛生管理者を中心に考えるのです。
きちんと計画を立てるためには、現在の事業場がどういう環境にいるのか、把握することが大切になるでしょう。

3.過労死等防止対策推進法とは

3-1.過労死を未然に防ぐための法律

「過労死等防止対策推進法」という法律をご存じでしょうか。
平成26年11月1日に施行された法律です。
あまりにも過労死が多発したことで、過労死を未然に防ぐための法律が施行されました。
過労死等防止対策推進法は、仕事と生活が調和できるような社会の実現を目的にしています。実現するために、過労死等に関する調査をしているのです。
過労死等防止対策推進法によると、過労死を防ぐための対策が4つあります。
「調査・研究」「啓発」「相談体制の整備」「民間団体の活動支援」の4つになるでしょう。
過労死等の調査や研究を行い、多くの人に過労死のことを知ってもらいます。
そして、過剰労働による相談体制を整備し、民間団体の活動支援をするのです。
対策は地道な作業になりますが、少しでも過労死を防ぐことができます。

3-2.国と地方公共団体、事業主の連携が大切

過労死等防止対策推進法の内容を見てみると、基本理念の部分で記載していることがあります。
法律は国が定めたものですが、過労死を防ぐためには国だけではできません。
国と地方公共団体や事業主との連携がとても大切になるのです。
過労死の実態を知るために、事業主は事業場の状況を把握しなければなりませんよね。
また、地方公共団体が地域の事業主に呼びかけをすることで、過労死をより多くの人に知ってもらうことができるでしょう。
毎年11月は、「過労死等防止啓発月間」と決まっています。
国民の関心や理解を得ることが、何よりも大きな対策になるのです。

4.まとめ

過労死の実態、過労死問題における衛生管理者とは、過労死等防止対策推進法について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
衛生管理者は、過労死を未然に防ぐことができる大切な役割を持っています。
衛生管理者は、事業場の環境や状況を把握してください。
現場を知ることで、どうすれば防げるのかわかるでしょう。
過労死が社会問題になっている中、衛生管理者の存在は大きくなりますよ。

  • 肉体的、精神的に負担がかかる
  • 心筋梗塞や脳出血など命にかかわる病気になりやすい
  • 年々増え続けている過労死
  • 過労死で多い年代は40歳~50歳
  • 最も多い職種は輸送、機械運転従事者
  • 衛生管理者の役割は大切
  • 過重労働をなくす環境をつくる衛生管理者
  • 過労死を未然に防ぐ法律「過労死等防止対策推進法」
  • 国と地方公共団体、事業主の連携が大切

以上のポイントは、ぜひ押さえておいてくださいね。
衛生管理者は、過労死を防ぐ大切な役割を持っていることを覚えておきましょう。