職場にメンタルヘルス不調者が出たら? 衛生管理者の対応策とは?

生活水準や医療技術の向上により、身体的な病気が原因で仕事ができなくなる人は少なくなりました。
しかし、その代わりメンタルが不調になって仕事に支障が出る人が増えています。
メンタルヘルス不調者が職場に出た場合はどのように対応すればよいのでしょうか?
そこで、今回はメンタルヘルス不調者への対応についてご説明しましょう。
上司や同僚などにもできることがありますが、衛生管理者が果たす役割も大きいのです。
自分の職場にメンタルヘルス不調者が出た際、対応方法を知りたいという方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。

目次

  1. メンタルヘルスが不調になると……
  2. 職場にメンタルヘルス不調者が出たら?
  3. メンタル不調者が休職した場合は?
  4. おわりに

1.メンタルヘルスが不調になると……

まず始めに、メンタルヘルスが不調になる原因やメンタルヘルス不調者が取りがちな行動をご紹介します。
メンタルヘルスが不調になると仕事にはどのような影響が出るのでしょうか?

1-1.ストレスがメンタルに不調を起こす?

メンタルヘルスが不調になる最も大きな原因は、ストレスといわれています。
一昔前までは、「まじめに働いていれば、一生不自由なく暮らせる」という考えが一般的でした。
しかし、現在ではまじめに働いていても、リストラや会社の倒産などで突然職を失う可能性があります。
また、現在の仕事内容は高いコミュニケーション能力を要求されるものが多いでしょう。
人間関係を円滑にするための努力が、強いストレスになる場合も少なくありません。
また、職場によっては人員削減の影響で、自分の処理能力を超える量の仕事が任されることもあります。
これも大きなストレスです。
さらに、セクハラやパワハラといったいわゆる「ハラスメント」の被害者も大きなストレスを受けます。

1-2.加齢が原因というケースもある

今は、女性も定年まで勤め続ける人が珍しくありません。
女性が40代半ば~50代になると、女性ホルモンの減少により体の不調が出る人が多いのです。
これが「更年期障害」。
症状の出方は人によって違いますが、メンタルヘルスに不調が強く出る人もいます。
また、女性に比べると数は少ないですが、男性にも更年期障害が現れる人もいるのです。
ですから、ストレスがないからといって安心ということにはなりません。

1-3.メンタルヘルス不調者が取りがちな行動とは?

メンタルヘルスの不調で最も多いのが、「うつ病」もしくは「うつ状態」です。
うつ状態になると、仕事の効率が落ちたりミスが増えたりするでしょう。
また、遅刻や欠勤が目立つようになります。
さらに、食欲がなく急に体重が落ちたり口数が少なくなったりするでしょう。
加えて身だしなみにも影響が出てきます。
何日も同じ服装で出社したり、化粧やひげそりをしていないのに気にするようすもなかったりする場合は、メンタルヘルスの不調を疑いましょう。
また、数は少ないですが「躁(そう)」の症状が強く出るケースもあります。
この場合は笑ってはいけないところで笑ったり、無茶な企画を立てて強引に進めようとしたりするのです。
さらに、金遣いも荒くなり、いきなり「職場の人全員に高価なプレゼントを贈った」というケースもあります。

2.職場にメンタルヘルス不調者が出たら?

では、職場にメンタルヘルス不調者が出たらどう対応すればよいのでしょうか?
この項では、対応の一例をご紹介していきます。

2-1.上司や同僚が話を聞く

メンタルヘルス不調者は、自分の状態がよく分かっていないことも多いです。
メンタルヘルスの不調は、熱が出たりどこかが痛かったりするような分かりやすい症状はありません。
体に不調が出ることもありますが、便秘や不眠、食欲不振など「がんばればがまんできる」ものが多いのです
また、病院を受診して検査をしても異常は発見されません。
ですから、「単なる疲れ」「怠け心が出ている」などと思いこんで無理をしている人も多いのです。
そこで、上司や同僚が「今の状態が普通ではないこと」「このままでは仕事に支障が出ること」などを告げて、何か悩みがないか聴いてあげましょう。
「大丈夫です」とはぐらかされても、根気強く説得を続けることが大切です。

2-2.産業医との面談を設定する

職場に衛生管理者が配置されている場合は、産業医との面談を設定しましょう。
メンタルヘルスの不調は、専門医が診察しなければなかなか病名がつかないことも多いです。
しかし、年配者ほどメンタルヘルスの不調に対する偏見も強いでしょう。
そこで、まず産業医と面談してもらい、原因が身体的なものなのか精神的なものなのかを判断してもらうのです。
その上で、専門医への紹介状を書いてもらってもよいでしょう。
医師の診察を受ければ「私は大丈夫、不調なところは何もない」といい張ることもできなくなります。

2-3.原因を調べる

メンタルヘルスの不調が仕事にある場合は、通院や服薬で一時的に症状が改善してもすぐに元通りになってしまうでしょう。
ですから、仕事内容や職場の人間関係でメンタルに不調をおよぼす原因がないか、調べる必要があります。
特に、セクハラやパワハラの場合は加害者側が無自覚という場合もあるのです。
ですから、調査には時間をかけて慎重に行いましょう。
原因を調べることで、第二、第三のメンタル不調者が出てくるのを予防できます。

3.メンタル不調者が休職した場合は?

医師の診断により、「休職の必要がある」と判断された場合は、衛生管理者や上司が中心となって休職手続きを行います。
休職を申請する場合は、医師の診断書が必要です。
また、どの程度休職が認められるかは会社によって異なります。
メンタルヘルスの不調は体の病気と違い、治る時期が分かりにくいです。
人によっては年単位の治療が必要になるでしょう。
ですから、メンタル不調者と休職に入る前に面談をして「いつまで休職が認められるか」ということや、「定期的な連絡の入れ方」などを伝えましょう。これは主に上司の役割になります。
衛生管理者は、メンタル不調者の報告を経営者に行う必要もあるでしょう。
衛生管理者の役割は、「従業員が安全に衛生的に働ける職場環境を整えること」です。
ですから、メンタル不調者が増えないように再発防止策を取る必要もあるでしょう。
メンタルヘルスが不調になった原因が仕事だった場合は、職場環境を改善する必要があります。
また、必要だと思ったらパワハラやセクハラなどの講習も行ってください。

4.おわりに

いかがですか?
今回は、メンタル不調者が職場に出た場合の対応についてご紹介しました。
まとめると
現代の職場ではメンタルヘルス不調者が出やすい。

  • メンタルヘルス不調者が出た場合は、上司や同僚が話を聞いてあげることが大切。
  • 衛生管理者は、メンタルヘルスに不調が出た原因を突き止め、再発防止策を取る(仕事が原因の場合)。
  • メンタル不調者が医者にかかりたがらない場合は、まずは産業医との面談を設定する。

ということです。
メンタルヘルスの不調は若い人には理解があります。
しかし、年配者ほどメンタルヘルスの不調に対する偏見が強い傾向にあるのです。
ですから、「何かおかしいな」と思っても無理をしてしまうことも多いでしょう。
さらに、専門医にかかることをかたくなに拒否する人も珍しくありません。
しかし、メンタルヘルスの不調は発症から時間がたつほど回復が難しくなります。
「おかしいな」と思ったらまずは衛生管理者が職場巡視のときに話を聞いてみましょう。