衛生委員会を設置する目的は? どんなことが議題になるの?
労働者は、安全で衛生的に仕事をする権利があります。そのために、一定の人数以上の従業員が所属している職場には「安全管理者」と「衛生管理者」を選出し、安全で衛生的に仕事ができるように職場の環境を整えているのです。しかし、これだけでは不十分なこともあるでしょう。そこで設置されるのが「安全委員会」と「衛生委員会」さらに、このふたつの委員会を合わせた「安全衛生委員会」です。
今回は、衛生委員会が設置される目的についてご紹介します。衛生委員会や、安全委員会のメンバーや議題にはどんなものがあるのでしょうか? 衛生管理者の資格取得を目指している方は、ぜひこの記事を読んで衛生委員会を設置する目的などを知ってください。
- 安全衛生委員会とは?
- 安全衛生委員会を設置しなければならない職場は?
- 安全衛生委員会の開催にあたって事業者が守ること
- 安全衛生委員会はどんなことを議題にするの?
- 安全衛生委員会に関する資格について
- よくある質問
1.安全衛生委員会とは?
すべての労働者は、安全で衛生的に仕事をする権利があります。そのため、安全管理者や衛生管理者が選出され、職場環境や労働の手順などを監視し、必要とあれば改善しているのです。
しかし、安全管理者や衛生管理者だけでは見つけられない危険性もあるでしょう。
また、現場の状況をわかっていない経営者が定めた安全衛生に関するルールだけでは不十分という意見もありました。そこで、「労働者が職場の安全と衛生に十分な関心を持ち、意見が事業者の行う安全衛生に関する取り扱いに反映されなければならない」という考えの基で設置されたのが「安全委員会」「衛生委員会」です。
職場によっては、このふたつを合わせた「安全衛生委員会」を設置している職場もあります。
2.安全衛生委員会を設置しなければならない職場は?
では、安全委員会や衛生委員会、さらに安全衛生委員会を設置しなければならない職場とはどのようなところでしょうか? この項では、この3つを設置しなければならない職場についてご紹介します。
2-1.安全委員会
安全委員会の設置は、労働安全衛生法第17条で定められています。林業や製造業や運送業・鉱業など、要するに「危険が生じやすい」職場では50名以上の従業員がいる場合、設置しなくてはなりません。それ以外の職場では、100人以上の従業員が所属している職場に設置する必要があります。
安全委員会では、
- 労働者の危険防止に対する対策
- 労働災害の原因および再発防止対策で安全に係るものに関すること
などについて、労働者の意見を取りまとめて事業者に意見を述べるものです。委員は、総括安全管理者や事業者が指名した安全管理者安全に関する経験がある労働者のうち、事業者が指名した者で構成されます。
2-2.衛生委員会
衛生委員会は、職種に関係なく常時50人以上の従業員が所属している職場に設置される委員会です。衛生委員会とは、労働者の健康障害防止や健康促進のための対策を、労働者の意見を取りまとめて事業者に意見を述べるもの。つまり、安全委員会は職場の安全に関する労働者の意見を事業者に述べるため、衛生委員会は労働者の健康に関する労働者の意見を事業者に述べるために設置されているのです。
ちなみに、衛生委員会の設置は労働安全衛生法第18条に定められています。委員は、総括衛生管理者や事業者に指名された衛生管理者。さらに、事業者が指名した衛生の経験がある従業員や作業鑑定測定士によって構成されているのです。
2-3.労働安全委員会とは?
労働安全委員会とは労働安全衛生法第19条に定められている委員会です。前述したふたつの委員会は、設置しなければならない規定がかぶっている職場もあります。このようなとき、ふたつの委員会を合わせた機能を持つ「労働安全委員会」を設置できるのです。つまり、ふたつの委員会の仕事を同時に行います。ですから、当然運営する人数も多くなり扱う議題も増えるのです。かなり大規模な組織になる職場もあるでしょう。
3.安全衛生委員会の開催にあたって事業者が守ること
安全衛生委員会は、ただ設置して終わりというわけではありません。安全委員会や衛生委員会も同様です。事業者は安全衛生委員会の開催にあたり、以下のことを守る必要があります。
- 毎月1回以上開催しなければならない。
- 委員会の議事録のうち、重要なものは3年間保管しておかねばならない。
- 安全衛生委員会の開催は、従業員に知らされなければならない。
- 事業者は、安全衛生委員の半数を労働組合や労働者の過半数を代表する者の推薦(すいせん)にもとづき指名しなくてはならない。
- 安全衛生委員会を設置していない職場は、労働者から安全・衛生に関する事項について意見を聴くための機会を設けなければならない。
- 委員会の開催時間は労働時間となり、委員会が法定労働時間外に行われた場合には残業代を払わなくてはならない。
といった決まりを守らなくてはなりません。
3-1.委員会設置までの流れ
安全衛生委員会を設置するには、安全管理者・衛生管理者・産業医・労働者(労働組合)と話し合って、委員を決めます。この時、安全管理者や衛生管理者・産業医は事業者側となり、労働者側は労働組合や労働者達の推薦によって人選されることが一般的です。人数に決まりはありませんが、極端な人数差が生じないようにしましょう。
3-2.委員会の構成、組織例
最小の安全衛生委員会の構成は、産業医・安全管理者・衛生管理者と、同人数の労働者(労働組合)から推薦を受けた委員です。事業所の人数が増えれば、委員会の人数も増えていきます。労働者側の委員と事業者側の委員は対等であり、どちらが上ということはありません。安全管理者や衛生管理者は委員会を組織しますが、一方的に通達を行っておしまい、では安全衛生委員会の意味がなくなってしまいます。委員会開催の度に、委員から意見を聞きましょう。
3-3.安全衛生に求められていること・取り組みについて
前述の通り、安全衛生委員会は職場の安全や衛生環境を促進するため、労働者の意見を事業者側に反映するために行われます。そのため、労働者側は職場で改善してほしい点を安全管理者や衛生管理者に伝え、両者はそれを経営者に伝えて対策を考えなければなりません。また、労働者側と事業者側の委員会が一緒になって職場の環境改善案を出しあうこともあります。
4.安全衛生委員会は、どんなことを議題にするの?
では、最後に安全衛生委員会はどのような議題を話し合わなければならないのか、その一例をご紹介しましょう。安全委員会は、職場の安全に関することを話し合うため、比較的理解しやすいかと思います。そこで、この項では衛生委員会の議題を中心にご紹介していきましょう。衛生委員会の資格取得を目指している方の参考にもなるはずです。
4-1.健康診断に関すること
健康診断は、従業員の衛生管理をするためにとても大切なものです。しかし、時間の経過とともに、以前の健康診断の内容では従業員の健康維持に役に立たなくなったというケースもあるでしょう。そこで、健康診断の内容や受診医療機関を見直したり、健康診断を受けさせる従業員の範囲を確定したりします。
現在は、正社員よりも派遣やパート従業員の数が多い職場も珍しくありません。そんな職場で、正社員だけが健康診断の対象になっているという場合は、従業員の健康維持はできないでしょう。ですから、安全衛生委員会で話し合って健康診断をどの雇用形態まで受けさせるかを決めるのです。また、ひとりでも多くの従業員に健康診断を受けてもらうための方法を考える場合もあります。
4-2.従業員がより健康的に働いてもらうための対策
職場の常識は、月日とともに変わっていきます。たとえば一昔前は、個人のデスクの上に灰皿があるのがあたり前でした。
また、セクハラに対する意識も薄く女性に性的な質問を「冗談」として浴びせることも多かったのです。若い世代ほどタバコやセクハラに対して抵抗があるでしょう。そこで、安全衛生委員会ではひとりでも多くの従業員に気持ちよく仕事をしてもらうために、対策を練る場合も多いです。
5.安全衛生委員会に関する資格について
安全衛生委員会を構成する有資格者には、
- 安全管理者
- 衛生管理者
- 産業医
があります。産業医は医師の資格を取得した後で、専門の講習を受講することによって産業医の認定を受けることが可能です。安全管理者は、一定期間安全管理の実務経験を積んだ後で、厚生労働省が定める講習を受講すれば、資格取得ができます。
衛生管理者は、薬剤師や保健師などの取得をした後で労働基準監督署へ申請を行うか、一定の実務経験を積んだ後で試験を受けて合格すれば取得可能です。中でも、衛生管理者は50名以上の従業員が所属している職場では必ず選任義務があるので、取得しておけば転職などにも有利でしょう。ちなみに、衛生管理者だけ一種と二種があり、一種はすべての職場で衛生管理を行うことができます。二種は、小売業など危険の少ない仕事を行う職場で衛生管理を行うことが可能です。
衛生管理者の試験は、安全衛生技術試験協会が主催していますので、資格取得を考えている方はまず協会のホームページを確認してください。
6.よくある質問
Q.安全衛生委員会は必ず設置しなくてはなりませんか?
A.はい。設置が義務付けられています。
Q.設置された安全衛生委員会が機能していない場合、責任は誰が負うのでしょうか?
A.最終的な責任は事業者が追いますが、安全管理者や衛生管理者が責任を問われることもあります。
Q.安全衛生委員会は、仕事ですか?
A.はい。業務の一環として考えられています。ですから、業務時間内に行わなければなりません。
Q.安全衛生委員会は男女どちらでも選任されることができるでしょうか?
A.もちろんです。
Q.安全衛生委員会を組織したら労働基準監督署へ届け出などは必要でしょうか?
A.現在のところは、必要ありません。
まとめ
今回は、安全委員会と衛生委員会さらにふたつの委員会を合わせた安全衛生委員会について、いろいろとご紹介しました。
まとめると
- 一定以上の従業員が所属している職場では「安全委員会」「衛生委員会」さらに、ふたつの委員会を合わせた「安全衛生委員会」を設置する必要がある。
- 委員は総括安全管理者や総括衛生管理者、さらに安全や衛生の経験がある従業員が指名される。
- 安全衛生委員会は、月1回以上開催され議事録は3年間保管しなくてはならない。
ということです。決して目立つ委員会ではありませんが、従業員が安全に衛生的に仕事を進めるための大切な委員会でしょう。
また、特に衛生委員会は職場の衛生に関する世代的なギャップを埋め、現在の常識を従業員に知らせなければなりません。そのために、衛生委員会は重要な役割を果たすのです。