従業員が50人以上の事業所に求められる役職や業務とは?

このような場合は、求められる業務も増していきます。
特に従業員が50人以上の事業所は選任しなければならない有資格者もいるのです。
それはいったい何でしょう?そこで今回は従業員50人以上の事業所に義務付けられている業務と、選任しなければならない役職をご紹介します。
これは、従業員だけでなく経営者のためでもあるのです。
これから従業員が増えるという事業所の責任者の方はぜひこの記事を読んで参考にしてくださいね。

目次

  1. 従業員が50人以上いる事業所で選任しなければならない役職とは?
  2. 職場における衛生管理とは?
  3. おわりに

1.従業員が50人以上いる事業所で選任しなければならない役職とは?

この項では、従業員が50人以上いる事業所で選任しなければならない役職についてご紹介します。
そもそも、50人以上の従業員とはどんな雇用形態を指すのでしょうか?

1-1.従業員が増えるということは?

従業員が増えるということは、それだけトップの目や指示が届きにくくなるということです。
また、いくら指導を徹底しても人が増えれば事故を起こす確率も増えるでしょう。
ですから、「従業員がより安全に衛生的に働けるよう」職場環境を整える必要があるのです。
ちなみに、この「従業員」とは正社員だけではありません。
パート従業員やアルバイトもそれに含まれます。
さらに、「従業員のほとんどが勤務時間内はどこかに派遣されている」という職場でも50人以上ならば選任しなければならない役職や業務は同じです。
気をつけましょう。
なお、50人以上というのは「事業所1つ当たり」の人数です。
事業所が3か所あってそれぞれ25人ずつ従業員がおり、合計で50人以上という職場などには適応されません。

1-2.選任されなければならない役職とは?

50人以上の従業員がいる職場では、

  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 産業医

の3つの役職につく人を選任しなければなりません。
これは誰でもよいというわけではないのです。
安全衛生管理者とは、理科系の高等学校以上の教育機関を卒業し、最低でも2年以上産業安全の実務を経験したものでないといけません。
衛生管理者は、専門の国家資格は必要です。
ちなみに衛生管理者には1種と2種があり、2種は衛生管理を行える職場が限られています。
産業医は、医師の資格を持ち労働者の健康管理を行える知識を得ているものという条件があるのです。
この3つのうち、産業医は常に職場にいる必要はありません。
ですから場合によっては、ひとりの医師が複数の事業所の産業医を掛け持ちしていることも多いです。
このような産業医を「食卓産業医」と呼びます。
しかし、衛生管理者は複数の事業所を兼任することはできません。
必ず1事業所に対して1人以上の衛生管理者が必要です。

1-3.衛生委員会の設置

衛生管理者や安全管理者がいても、職場の衛生や安全を完璧に守ることはできません。
そこで、50人以上の従業員を雇っている事業所は、衛生委員会を設置する義務があるのです。
衛生委員会は、事業所の安全衛生を統括する者(事業所のトップが多い)と衛生管理者、産業医、衛生に関する経験を有する労働者の3つの役職で構成されます。
ちなみに、職場によっては、安全管理者も加わって「安全衛生委員会」とするところもあるのです。
この衛生委員会で審議されることは多岐にわたりますが、それをまとめると「従業員がより健康で安全に働けるように対策を講じること」でしょう。
ちなみに、最も従業員に身近な審議内容は、健康診断の実施日の計画です。
なお、50人以上従業員がいる事業所は、健康診断の結果報告書を労働基準監督署長に提出しなければなりません。

2.職場における衛生管理とは?

衛生管理というと、病気にならないように食生活や生活習慣に気を配るというイメージがあります。
では、職場における衛生管理とはなにをするのでしょうか?
この項では、それをご紹介します。

2-1.職場の衛生管理の内容とは?

職場の衛生管理を一言で表すと「従業員が健康的に働けるように、職場の環境や労働状態に気を配る」ということです。
明治時代以降からつい30年ほど前まで、企業は利益を最優先で事業を行ってきました。
その結果、従業員が健康を害したり公害病が発生したりしたのです。
いまだに従業員の健康悪化に対する企業の責任問題を、裁判で争っている例もあります。
また、バブル時期以降問題になっているのが、過重労働です。
少人数の従業員に多量の仕事を任せた結果、残業が月に100時間以上になり健康を損ねる従業員が続出しました。
ちなみに「過労死」という言葉は、海外でもそのまま通用します。
衛生管理は、このような過重労働を防ぐ役割も担っているのです。

2-2.従業員が健康に働ければ、企業の利益にもつながる

バブル経済がはじけてから、日本は長い不況に陥っています。
その最中に、「従業員はいくらでも使い捨てができる」と誤った考え方をする事業者も出てきました。
いわゆる「ブラック企業」ですね。
ブラック企業はもちろん、従業員の健康のことなど考えませんでした。
しかし現在、ブラック企業の名前が広く知られるようになった結果、そのような企業は従業員確保に頭を悩ませています。
つまり、労働者が健康に働けるように職場環境や仕事内容を管理していれば、企業の利益にもつながるのです。

2-3.基本は健康診断

衛生管理の主な業務内容は、職場巡視と健康診断です。
職場巡視とは、衛生管理者が定期的に職場を巡回して、職場が労働者の健康を損ねるような環境になっていないか見て回ること。
「工場などならともかく、ごく普通のオフィスならば健康を損ねるような環境にならないのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、ごく普通のオフィスでも照明が明るすぎたり暗すぎたり、給湯室が不潔だったりすれば従業員の健康を損ねる恐れがあります。
つまりどんな職場でも巡視は必要なのです。
また、健康診断は従業員の健康状態を知る大変重要なもの。
衛生管理者は衛生委員会で健康診断の日程を決め、従業員に告知する業務があります。
しかし、会社は従業員に健康診断を受診させる義務があっても、従業員は受けなくても罰則はありません。
ですから、ひとりでも多くの従業員が健康診断を受診できるように、日程を調整することが大切です。
なお、健康診断の結果、従業員に共通の疾患が見つかったら至急職場環境を改善しなくてはなりません。
また、特定の従業員の健康状態が悪化した場合は、産業医との面接の場を設けたり、事業主に職場の移動を提案することも衛生管理の業務の一環です。

3.おわりに

いかがでしたか?
今回は、従業員が50人以上いる事業所に義務付けられている業務や、選任しなければならない役職を衛生管理を中心にご紹介しました。
まとめると

  • 50人以上従業員がいる事業所では安全管理者、衛生管理者、産業医を選任しなければならない
  • 衛生委員会か安全衛生委員会を設置する必要がある
  • 衛生管理者は職場巡視をしたり、健康診断の日程を決めて調整する役割がある

ということです。
職場の衛生管理は、利益追求の前にはつい忘れられがちなことでしょう。
しかし、従業員の健康が損なわれて働けなくなれば、企業にとっても大きな痛手です。
従業員の健康をないがしろにした結果、「ブラック企業」とレッテルを張られればマイナスイメージもついてしまうでしょう。