作業環境管理とはどのようなことをするの?衛生管理者の役割とは?

作業環境管理衛生管理者の仕事のひとつに、作業環境管理があります。
これはいったいどのような仕事なのでしょうか?
また、すべての職場で行わなければならないのでしょうか?
そこで今回は衛生管理者が行う作業環境管理についてご紹介します。
作業環境管理を行うには、作業環境測定法や作業環境評価基準に基づいて作業環境を管理区分する必要があります。
その方法や事例などもご紹介しましょう。
衛生管理者の資格取得を目指している方や、衛生管理者の仕事内容を知りたいという方は、ぜひ読んでみてくださいね。

目次

  1. 作業環境管理とは?
  2. 職場が第2管理区分、第3管理区分と評価されてしまったら?
  3. 衛生管理者にできることとは?

1.作業環境管理とは?

この項では、作業環境管理の方法や行わなければならない職場をご紹介します。
決して目立つ仕事ではありませんが、労働者の安全と健康を守るためには欠かせないものです。

1-1.作業環境って何?

作業環境とは、労働者が仕事をする環境のことです。
職場によっては毒劇物を扱ったり粉じんが発生したり、作業中に激しい音が出る場合があります。
そのような危険な環境で仕事をすることは、労働者にとっては大変なリスクになるでしょう。
そこで、労働者が安全に健康的で働けるように職場の環境を整えるのが、衛生管理者の仕事のひとつなのです。

1-2.作業環境管理の方法とは?

作業環境を管理するためには、作業環境測定を行う必要があります。
作業環境測定を簡単に説明すると「この職場環境がどれだけ健康に影響を与えるのか客観的に測定をすること」です。
作業環境測定を行う際、

  • 粉じん
  • 放射性物質
  • 特定化学物質等
  • 有機溶剤

を扱う「指定作業場」の環境を測定するには、作業環境測定士に依頼する必要があります。
また、測定した結果、作業環境評価基準に基づき、職場は1~3までの管理区分に分けられます。
これも優しい言葉で解説すると、第1管理区分はそのまま働き続けても問題のない環境です。
しかし、第2管理区分は改善の余地あり。第3管理区分は改善する必要がある職場環境ということですから、改善の上、再測定をする必要があります。
また、第2管理区分、第3管理区分に職場が測定されてしまった場合は、再測定の結果を従業員全体に知らせる義務があります。

1-3.作業環境を管理し、測定しなけらばならない職場とは?

労働安全基準法に基づくと作業環境の管理はすべての職場に必要です。
しかし、特に土石や鉱石、金属や炭素の粉じんが発生する職場、極端に暑かったり寒かったりする職場、騒音を発生する職場は6カ月ごとに職場環境を測定する必要があります。
また、これより頻繁に職場環境を測定しなければならない職場は、炭鉱などの坑内で作業をする場合や、放射線を扱っている職場です。
こちらは半月~1カ月ごとに職場環境を測定しなければなりません。
つまり、人体に短時間で悪影響を与える物質を扱っている職場ほど、厳重に作業管理を行わなければならないということですね。
しかし、人体にとって危険な物質を扱っていない職場でも、2カ月に1回環境測定を行わなければならない場所があります。
それは、中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の部屋で、オフィス用として貸し出されているものです。
具体例をあげると、高層ビルなど安全管理の面で窓が開かない部屋は、空調管理が制御室で行われています。
万が一故障したり、停電などで動かなくなった場合は、室内の空気循環がうまくいかずに一酸化炭素中毒を起こす可能性があります。
たとえ危険な物質を扱っていなくても、建物のシステムが故障すれば健康に被害を与える可能性があるという職場もあるのです。

2.職場が第2管理区分・第3管理区分と評価されてしまったら?

作業環境測定の結果、職場が第2、第3管理区分と評価されてしまったら至急改善を行う必要があります。
特に第3管理区分に測定された場合は、そのまま放置しておくと労働者の健康が損なわれる可能性があります。
改善方法としては、空気清浄機の設置や、作業方法の見直し、危険物の管理方法の見直しなどがあげられます。
作業環境を整えることは、コストがかかる場合も多いです。
しかし、職場の環境管理を怠った結果、労働者の健康被害がおき、集団訴訟へなどという流れになったら企業のダメージは計り知れないでしょう。ですから、作業環境を整えることは企業を末永く健全に運営していく意味でもとても大切なことなのです。

3.衛生管理者にできることとは?

それでは最後に、職場環境を整えるために衛生管理者ができることをあげていきましょう。
衛生管理者に選任されれば、これが日常業務になることも多いです。

3-1.職場の巡回

職場の環境を整えるためには、定期的な巡回は欠かせません。
法令によると1週間に1回の巡回が望ましいとされていますが、職場環境測定の結果、第2管理区分や第3管理区分になってしまった場合は、もっとこまめに回っても良いでしょう。
また、職場の環境を整えても、従業員が作業手順を守らないと健康被害が発生することもあります。
ですから、従業員が定められた手順で作業を行っているか確認もする必要があります。

3-2.設備の点検

労働者が安全に健康的に仕事をするために職場環境を整える設備が設置されている職場は多いでしょう。
それを点検することも衛生管理者の仕事のひとつです。衛生管理者とはいえ、電気や機械のことはわからないと思うかもしれません。
しかし、正常に作動をしているのか調子がおかしいのかくらいはわかります。
設備の故障の発見が遅れたため、労働災害が発生したということがないように注意しましょう。

3-3.産業医との連携

職場の健康被害は自覚症状がない場合があります。
特に放射線を扱う仕事の場合は、時間がたってから健康被害が現れたり、血液検査をしなければ被害が発見できないこともあるでしょう。
また、派遣作業員の場合は職場で取り扱っている物質が原因で健康被害が起こっても気がつかない場合もあります。
ですから、衛生管理者は産業医と連携し、職場の安全管理や健康管理を行う必要があります。
たとえば医師の診察が必要な従業員がいたら、産業医への受診をすすめるように促したり、受診の場を設定したりすることです。
また健康診断の結果、特定の疾患が従業員に集団で発生する傾向が見られる場合は、すぐに対策を練らなくてはなりません。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は作業環境管理の必要性や方法などをご紹介しました。
まとめると

  • 作業環境管理とは労働者が安全に健康的に働けるように職場の環境を整えること
  • 粉じんや毒劇物など健康にすぐに悪影響が出る物質を扱っている場合は作業環境測定士による作業環境の測定が定期的に必要
  • 第2・第3管理区分になったら早急に改善をしなければならない

ということです。
かつて、日本では職場環境よりも企業利益を優先した結果、労働者への深刻な健康被害が多発した苦い経験があります。
また、職場の作業環境が悪化すれば、それは職場の外へと広がっていくかもしれません。その最悪の例が公害病です。
現在はふたたび労働者の健康と安全よりも企業の利益が優先という風潮になってきています。
安全衛生管理者はその風潮を食い止めなくてはなりません。
問題が起こらなければ、注目されることは少ない仕事ですが、なくてはならないものでしょう。