安全衛生教育とはどのような内容なのか?
「安全衛生教育」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
危険なものや有害な成分を取り扱う際、十分に気をつけておかなければ健康だけでなく、命に関わることもあるので注意しておかなければなりません。
安全衛生教育とは何なのか、衛生教育や安全衛生責任者教育など、どのような内容なのか詳しくみていきたいと思います。
労働者が安全に働けることができるように、事業者が教育を行っていくことが大切。
どのような教育を行えば良いのか、一緒に確認していきましょう。
1.安全衛生教育とは?
安全に労働者が働くために必要なこと
労働者の健康に関わるような危険な作業場や工場、災害防止のために欠かせないのが「安全衛生教育」。
これは、事業主に義務づけられている教育となっており、必ず労働者たちに指導をしていかなければなりません。安全面を確保するためにはとても重要なことなのです。
安全衛生教育をおこなっていかなければならない業種は特定されています。特定されている業種のなかでも比較的危険度が高い場所は、労働者だけでなく、職長にも教育は必要とされており、特別な教育もおこなっていかなければならないと定められているようですね。
「安全衛生教育」は労働者が安心して働くために、事故にあわないために必要不可欠な教育と思っておいてください。
安全衛生教育の内容について
気になる安全衛生教育の内容ですが、対象者によってさまざまな内容があります。
主に労働安全衛生法で定められている安全衛生教育は以下のとおりです。
- 安全管理者に対する教育
- 雇入れ時におこなう教育
- 作業内容変更時におこなう教育
- 特別教育
- 職長におこなう教育
- 危険・有害作業をおこなう者に対する教育
これらの6つはそれぞれ、管理者・労働者・職長によって分けられ、環境によっても必要とされる知識が変わってくることがわかると思います。
より危険な場所であればあるほど特別教育や危険・有害作業に必要な教育をおこなっていかなければなりませんし、作業内容が変更された場合は必ずその内容に見合った教育が必要です。
事業者はこれらをきちんと把握したうえで労働者に教育をしていくことが法律的に定められていることを覚えておいてください。
一般的に定められている安全衛生教育
先ほど紹介した教育内容はケースバイケースでのものでしたが、次は一般的に定められている安全衛生教育について説明していきたいと思います。
- 労働安全衛生法及び関係法令や規制についての一般的な知識
- 安全心得・社内安全衛生規則・基本ルール
- 製造工程や設備構造といった一般的な職場の知識
- 安全ルール・保護具の種類などの安全衛生知識
- 異常時・災害発生時の緊急対応法
これらの5つが一般的な安全衛生教育。
衛生教育が必要な職場には欠かせない内容となっているため、当てはまる職場で働いている方は必ず知っておかなければなりません。
面倒だと思うかもしれませんが、しっかり把握しておかなければ人の命に関わる事故・災害を引き起こしてしまうでしょう。
また、いざ起きたときにすばやく対応をすることができなくなってしまいます。
未然に事故を防ぐためにも必ず知っておいてほしい内容なのでチェックしてください。
2.安全衛生教育の重要性
労働災害を未然に防ぐために…
労働者が働く場所で起きている災害のことを「労働災害」と言いますが、年々必ず起きています。
労働災害で失われた命もあり、後で分析してみると未然に防ぐことができたのではないかと認められました。
つまり、危険有害性や衛生教育に関わる知識や情報をしっかり把握しておけば、未然に労働災害を防ぐことができたのです。
このことから、危険有害業務に関わる労働者や事業者には資格取得・特別教育を実施しなければならないと義務づけられるようになりました。
なぜ、安全衛生教育が必要かと問われれば、1番に「労働者の安全を守るため」と答えることができるでしょう。
いつまでも健康的に安全に働くためには必要不可欠な知識なのです。
対象者によって必要な教育・訓練計画をたてることが大切
対象者は労働者・事業者・職長など、その立場によって適切な衛生教育の内容も変わってきます。
安全衛生教育の重要性は、その対象者に見合った教育を実施することにあるといえるでしょう。その内容に基づいてきちんと教育を受けていかなければ労働災害を引き起こしてしまうため、対象者によって必要な教育・訓練計画を立てていくことが大切です。
また、労働者に対しての衛生教育は、労働安全衛生法によって定められている内容はもちろんのこと、その会社によって定められている内容もあります。
仕事をおこなう環境によって教育の実施が変わってくると思うので、自分の職場ではどのような教育が必要なのか確認しておくと良いでしょう。
安全衛生関係団体等が主催している講習会・説明会
自社だけでは十分に教育を実施することができないところもあるかと思います。
そのような場合は、安全衛生関係団体等が主催している講習会・説明会に参加してみてはいかがでしょうか。
自分たちだけでは教育ができないと諦めるのではなく、そのような団体を利用してしっかり知識を取得しましょう。
きちんと教育をおこなっているところは、講習会・説明会に積極的に参加しています。
不安な気持ちで作業をするよりも、安心して働けた方が仕事も効率的におこなえるでしょう。
3.安全衛生責任者教育とは…?
安全衛生責任者の役割
「安全衛生責任者」とは一言でいえば、“現場全体を管理する”仕事のことです。
労働安全衛生第16条によると、安全衛生責任者を選ばなければならない業種は建設業・造船業といったものであり、統括安全衛生責任者との連絡、調整をおこなうことと記載されています。
主な業務は以下のとおりです。
- 統括安全衛生責任者との連絡
- 統括安全衛生責任者から受けた連絡をその場の関係者へ伝える
- 仕事場の衛生管理
- 作業計画の提案・調整
- 労働災害を引き起こさないかどうかの確認
現場の衛生管理をまとめる大切な役割を担っているのでスムーズに統括安全衛生責任者とコミュニケーションをとっていかなければなりません。
そして、分かりやすくその場の労働者や関係者に伝えていくことが大切です。
つまり、統括安全衛生責任者と仕事場をつなぐ役割をもっていることになります。
安全衛生責任者は安全衛生についての知識や情報はもちろん、全体をしっかり把握する管理能力も必要とされるでしょう。
安全衛生責任者はなぜ必要なのか?
建設業や造船業はいくつもの事業者が協力しておこなうケースが多々あります。
そのような場所で働く人たちすべてを管理し、衛生面での安全を確保するためには安全衛生責任者が欠かせません。
混在作業をおこなうとどうしても事がスムーズに運ばず、労働災害を引き起こしてしまう傾向がみられます。
労働災害が発生すると工事が中止になる可能性もあり、労働衛生責任者が責任をもって防いでいかなければなりません。
現場全体を把握するために必要不可欠な存在だということを覚えておいてください。
また、労働衛生責任者はその場を直接指示することになる「職長」が兼任する場合もあります。
教育と訓練内容について
安全衛生管理者教育の内容は、主に「教育」と「訓練」の2つ。
教育においては、専門的な知識や情報を学び、訓練においては実技が主な内容です。
- 作業方法の決定・適切な労働者の配置
- 監督・指導方法
- 危険・有害性が発生したときの措置法
- 異常時における対処法
- 労働災害防止活動
- 安全衛生責任者としての職務
- 統括安全衛生管理の進め方
などなど、これらが安全衛生管理者教育内容となっています。
この内容に沿って訓練もおこなわれることでしょう。
安全衛生管理者教育は、各都道府県でおこなわれており、2日~3日程度で知識を叩き込まれ、安全衛生管理者または職長として働くことができます。
対象者は、職長の職務についている方、安全衛生責任者に選任される予定の方と決まっているため、必ず確認してくださいね。
4.安全衛生責任者を選出しなければならない業種
安全衛生責任者を選出しなければならない業種は労働者数によって変わることを知っていたでしょうか。
例えば、100人以上が働いている林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業、300人以上働いている製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業・通信業・家具・健具・じゅう器等卸売業・各種商品卸売業・ゴルフ場業・自動車整備業・燃料小売業・旅館業などなど、本当にたくさんの業種があります。
自分がどのような職場で働いているのか、安全衛生責任者を選出しなければならない業種なのか確認してみてください。
まとめ
安全衛生教育について説明してきました。
危険・有害物質を扱っている職場で働いている人には必ず衛生教育を受けておかなければなりません。
とくに、危険な地域ではそれ以上に専門的な知識が必要となるので注意してください。
- 安全衛生教育は安全に働くためには必要不可欠な知識
- 働く環境によって適切な教育内容がある
- 対象者によって教育内容は違う
- 労働災害を未然に防ぐために大切
- 安全衛生団体等が主催している説明会・講習会がある
- 現場の全体の衛生面を管理する安全衛生責任者
- 安全衛生責任者を選任しなければならない業種は労働者数によって変わる
まとめると以上のようになりました。
危険な場所での作業に関わる事業者・労働者・職長すべての人が安全衛生教育についての知識を身につけておく必要があります。
自分は教育をきちんと受けているのかどうか確認し、もし受けていないのであれば会社に問い合わせてみてください。
そして、各都道府県でも衛生教育についての講習会を開いているので参加してみると良いでしょう。
安全・安心を得るためには欠かせない教育内容です。
未然に事故を防ぐためにもきちんと身につけておいてください。