工場ではたくさんの人が作業し、あらゆる機械が動いているので、どこで何が起きるのか分かりません。少し間違えば人の命に関わる大事故につながってしまうこともあります。事故が起きないようにするためには、工場に潜む危険予知のトレーニングに取り組むことが大切です。

本記事では、工場における危険予知トレーニングや工場事故を防ぐ取り組みなどについて解説します。

  1. 工場に潜む危険とは?
  2. 危険予知トレーニングとは?
  3. 危険予知トレーニングの取り組み方
  4. そのほか工場事故を防ぐ取り組み
  5. 工場における危険予知に関してよくある質問

この記事を読むことで、工場における危険予知トレーニングの取り組み方などが分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。

1.工場に潜む危険とは?

最初に、工場にどのような危険が潜んでいるのかチェックしておきましょう。

1-1.機械の誤操作・メンテナンス不足

工場に潜んでいる危険として、機械の誤操作があります。誤操作の原因はヒューマンエラーだったり、機械のメンテナンス不足だったりと多種多様です。工場には必ずといってもいいほど、たくさんの機械が設置されています。その場で働く人たちが、機械の扱い方や注意点などをしっかりと共有しておかないと労働災害につながる恐れもあるのです。「きちんと共有しておけばよかったが……」ではすでに手遅れなので、事前にしっかりと共有しておかなければなりません。

1-2.積み上げていた荷物が崩れる

工場に潜む危険はたくさんありますが、積み上げていた荷物が崩れて下敷きになってしまったという事故もよく起きています。工場によっていろいろな製品を生産していると思いますが、その製品をつくるために必要な素材などを保管しているところも多いでしょう。よく、工場・倉庫にはダンボールが積み上げられていると思います。そのダンボールが落ちてしまうと、その下で作業していた従業員が下敷きになってしまう恐れがあるので非常に危険です。機材に挟まれたり、部品が飛んできてケガをしたりする危険もあるでしょう。

1-3.フォークリフトの事故も多い

物流倉庫などで使われているフォークリフトによる事故も、工場における危険です。フォークリフトは人の力では持ち上げることのできないものを簡単に持ち上げたり運んだりすることができます。とても便利なものではありますが、フォークリフトの運転ミスで人に衝突してしまう危険もあるのです。実際、フォークリフトに衝突され下敷きになってしまうという死亡事故も起きています。

2.危険予知トレーニングとは?

ここでは、危険予知のトレーニングについて解説します。

2-1.危険を予知するための訓練

工場における危険予知トレーニングを簡単に説明すると、危険を予知する訓練のことです。工場を安全に稼働させるためには必要不可欠な訓練といえるでしょう。主に工事現場で実践されており、作業の中で起こり得るリスクについて話し合い考えることが基本となります。1人だけでなく複数で予知できる危険について話し合い考えることで、自分には見えていなかった危険が分かるようになるでしょう。

2-2.現場に潜む危険を事前に確認できる

危険予知トレーニングをする大きな目的は、現場に潜む危険を事前に確認することです。前述したように、危険予知トレーニングは事故や災害を未然に防ぐために行います。何度も危険予知トレーニングを繰り返すことで、現場にどのような危険が潜んでいるのか事前の確認が可能です。共有できていなかった情報が従業員全員に行き渡ったり、注意喚起ができたりと工場をより安全で安定した稼働へつなげることができます。ちょっとした行動が思わぬ大事故につながる可能性があるからこそ、少しでもリスクを減らすことが大切です。

2-3.危険予知トレーニングのメリットはたくさん

危険予知トレーニングを取り入れることで生まれるメリットはたくさんあります。たとえば、危険感受性が養えることです。基本的に、危険予知トレーニングは自分たちが行う作業の中にどのような危険があるのか考えるため、自然と危険を感じる能力を養うことができます。危険に対する意識が高まることで、事故を未然に防止できるでしょう。また、現場ですぐにできる対策を考えることができますし、従業員同士のコミュニケーションづくりにも役立つというメリットがあります。

3.危険予知トレーニングの取り組み方

それでは、危険予知トレーニングの取り組み方について解説します。

3-1.危険予知トレーニングのシートを活用する

基本的な方法としては、危険予知トレーニングのシートを活用することです。シートにはイラストが描かれており、そのイラストを見ながらどのような危険が潜んでいるのか考えます。できるだけ多くの危険を予測できるように、従業員同士で考えてみてください。また、その危険が災害や事故につながらないようにするためにはどのような対策が有効か、考えることも大切なポイントとなります。なお、危険予知トレーニングシートはホームページで検索するとたくさん出てくるので、ぜひチェックしてみてください。

3-2.基礎ラウンド法

危険予知トレーニングにはさまざまな方法がありますが「KYT(危険予知トレーニング)基礎4ラウンド法」が基本となります。前述したように、イラストシートなどを使って4段階の手順で話し合い、問題を解決していく方法です。具体的な内容については、下記を参考にしてください。

  1. 1R:どんな危険が潜んでいるのか、イラストシートを見ながら考える
  2. 2R:発見した危険の中で、これが重要だと思われる危険を把握する
  3. 3R:把握した危険について、その危険を解決するにはどうしたらいいのか考える
  4. 4R:みんなの話し合いによる合意で対策をしぼり込む

きちんと1つずつクリアした上で最終的な対策をしぼることがポイントとなります。1Rではイラストシートの状況の中に潜む危険をそれぞれが発見し、話し合いながら共有することが大切です。そして、2Rでは自分でこれが重要だと思われる危険を把握して○印をつけましょう。それぞれが感じた危険要素について話し合い、合意でしぼり込んだ箇所に◎印とアンダーラインをつけます。そこを危険ポイントとし、その部分を解決するにはどうしたら良いか考えていきましょう。

3-3.従業員や責任者全員が1つになることが重要

危険予知トレーニングは1人だけでするものではありません。従業員同士で話し合い、お互いの意見を聞きながら工場に潜んでいる危険について考えることが1番大切なポイントとなります。また、現場で働く従業員だけでなく、責任者も一緒になり、やる気を持って取り組んでいかなければなりません。責任者にやる気がなければ、従業員も注意力が下がってしまいます。現場のトップがやる気の姿勢を見せることで、職場の安全衛生意識が大きく高まることになるのです。従業員と責任者が1つになって危険予知トレーニングに励みましょう。

4.そのほか工場事故を防ぐ取り組み

ここでは、そのほかの工場事故を防ぐ取り組みについて解説します。

4-1.事故防止に必要不可欠なメンテナンスと保守

危険予知トレーニングだけでなく、工場で起こり得る事故を防ぐためには、保守やメンテナンスも必要不可欠です。ほとんどの製造工場では、ベルトコンベアといった機材や設備がそろっているでしょう。それぞれの機材と設備を正常に稼働させるためには、保守やメンテナンスが必要です。保守やメンテナンスをしっかりと行っていない場合、機械・設備の部品が老朽化し突然故障して使えなくなるリスクが高くなります。製造がストップするだけでなく、人命に関わる危険もあるので十分に注意しておかなければなりません。

4-2.安全衛生の基本となる「5S」

工場事故を防ぐために、安全衛生の基本となる「5S」を徹底することも大切なポイントです。5Sとは、以下のような内容を指しています。

  • 整理:必要なものと必要でないものをきちんと分けて整理する
  • 整頓:必要なものを決められた場所に置いて整頓する
  • 清掃:きちんと掃除をして、きれいな状態を保つ
  • 清潔:整理・整頓・清掃したら、その状態を維持する
  • 躾(しつけ):決められたルール・手順をきちんと決められたとおりに行う

工場の作業環境が汚かったり、いろいろな道具や材料などが散らばっていたりすると、足元が不安定になり転んでケガをする恐れがあります。5Sを徹底し、定期的に整理整頓や清掃を行うことで作業しやすい環境をつくることができるでしょう。また、従業員同士が意識を高め習慣づけることも大切です。

4-3.従業員のメンタルケアや健康管理も大事

工場事故の中には、従業員のストレスや過労が原因になることもあります。そのため、従業員のメンタルケアや健康管理も工場事故を防ぐ大切な要素です。ストレスが重なると健康不良になりやすくなりますし、イライラしやすくなって作業が乱雑になる可能性もあります。ストレスがたまったり体調が悪かったりする際には、気楽に上司へ相談できる環境にもしなければなりません。上司と従業員のコミュニケーション不足によって事故が起きる可能性もあるため、風とおしのいい職場環境をつくることも心がけてください。

5.工場における危険予知に関してよくある質問

工場における危険予知に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.危険予知トレーニングの効果は?
A.さまざまな企業や工場、自治体でも危険予知トレーニングを行っているところから、その効果は高いといえるでしょう。危険予知トレーニングは危険について考える訓練です。訓練を地道に積んでいけば、危険に対する意識も自然に身につくようになりますし、事故の発生リスクを抑えることができるでしょう。また、実際に自分の意見を出したり、ほかの人の意見を聞いたりすることで注意すべきポイントが頭の中に入ります。

Q.リスクアセスメントとの違いは?
A.職場・作業の危険有害要因を洗い出し、リスクを見積もり順位づけし、リスクの高いものから対策を講じる取り組みがリスクアセスメントです。危険予知トレーニングと似ているように感じると思いますが、大きな違いはたくさんあります。たとえば、危険予知トレーニングは毎日または作業の都度に行うものですが、リスクアセスメントは毎年の安全衛生計画を作成する前に行うものです。また、リスクアセスメントは設備面の対策が基本となり、管理者・監督者・作業者などが単独で行うことになります。

Q.危険予知トレーニングをマンネリ化させないコツは?
A.マンネリ化させないためには、会社の責任者などリーダーの創意工夫が必要です。たとえば、月ごとに優秀グループを表彰したり、コミュニケーションを積極的に行ったりするなど、お互いの意見を伝え合う機会をつくるやり方があります。誰かがいい注意ポイントをピックアップした場合は、リーダーやトップが褒めてあげることで周囲のやる気も自然と湧き出てくるものです。

Q.ヒヤリハットとは?
A.事故の可能性があった事象のことをヒヤリハットといいます。毎日行っている作業は自然と慣れてくるもので、注意力も下がってしまいやすいでしょう。ヒヤリハットは注意力が低下する際に起こりやすい傾向があります。リスクや危険を覚えている間は気をつけようとしますが、時間がたつと忘れてしまいがちです。そのような事態を避けるために、ヒヤリハットが起こるたびにきちんと上司に報告することを心がけてください。

Q.工場で危険を避けるための心得は?
A.マニュアルを共有し、全員が遵守することが1番の心得といえるでしょう。危険予知トレーニングの効果が現れている工場ほど、マニュアルをきちんと遵守しているという共通点があります。大きな工場ではマニュアルが遵守されていることが多いのですが、小さな工場ではマニュアル自体が存在しないこともあるでしょう。その場合は、先輩や周囲にいる人に危険の事例を尋ねてみてください。

まとめ

工場における危険予知トレーニングは、工場で起こり得る事故を防ぐための役割を担っています。多くの従業員や責任者が工場の危険について話し合い、リスクについて考えることが大切です。毎日行うことで危険に対して意識を高めることができますが、どうしてもマンネリ化してしまいます。それを防ぐ方法として、責任者やリーダーが模範的な従業員やチームを褒めてあげたり、コミュニケーションを取ったりすることが大切なポイントです。ぜひ日ごろの作業から心がけてみてください。


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